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「粗食が大切」は寿命を縮める
高齢者に広がる栄養不足

 「粗食が大切」という認識が後期高齢者に浸透し、加齢にともなう体重減少や筋力低下などが起きる「フレイル」の背景になっている-。ネスレ・ヘルスサイエンスが行ったアンケート調査で、多くの高齢者が健康のためと思って自ら食事の量を減らし、十分な食事がとれていない実態が浮かび上り、2人に1人以上の割合でフレイルの疑いがあることも示された。

高齢者は今の食事量で栄養が十分と思っている=ネスレ調査に基づき作成

 ◇栄養が足りていない

 調査はインターネット上で行い、①75歳以上の男女500人②75歳以上の同居家族を介護・支援する男女500人③管理栄養士200人-が回答した。

 後期高齢者がとっている現在の食事量・内容で必要な栄養素がとれているのかどうか。足りていると「思う」「まあまあ思う」と回答した高齢者が計90%に達しており、今の食事量で十分と考えていてた。介護・支援者も73%と高かったが、管理栄養士は29%で、栄養のプロからみると高齢者の栄養が足りていない実態が示された。

 ◇「粗食は不健康」

 「健康のために粗食が大切」と考えている高齢者が76%に上るのに対して、管理栄養士は20%。高齢者が「粗食が健康の秘訣」と認識する一方で、管理栄養士は「粗食は不健康」と見ていることが分かった。

高齢者に粗食志向。栄養のプロから見ると不健康=ネスレ調査に基づき作成

 今回の調査では、厚生労働省が作成した、健康状態などを確認する「基本チェックリスト」を活用してフレイルの疑いがあるかどうかも調べた。その結果、高齢者の59%で健常と要介護の中間に位置するフレイルが疑われた。

 こうした高齢者について詳しく調べたところ、80%が「粗食が大切」と考えていると回答。食事量については「減らしている」が8%、「少し減らしている」が72%に達していた。

 ◇要介護度が上昇

 フレイルの疑いがある高齢者は疑いのない層と比べて、食をめぐる悩みを持っている割合が1.5倍に上った。具体的には、「メニューを考えるのが面倒」「特定の食材ばかり食べてしまう」などが多く、食事の準備にわずらわしさを感じている傾向が示された。「運動量が減って空腹を感じにくくなった」と感じている高齢者も多数おり、身体的な問題もうかがわせている。

 調査を踏まえて日本静脈経腸栄養学会の東口高志理事長(藤田医科大学医学部外科・緩和医療学主任教授)は、「75歳以上のほとんどが、必要な食事量に足りておらず、その原因が『粗食が大切』という間違った認識の浸透によっている」と指摘。その上で、「過度の痩せや高齢者の低栄養は生活の質を低下させ、要介護度を増し、疾病から回復延滞、寿命の短縮につながってしまう」と警鐘を鳴らしている。

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