治療・予防

長寿の秘訣はかみ合わせ
歯並び整え、食事もおいしく

 ◇高い患者の満足度

 「人生100年時代」というが、それは食事をおいしく食べることができ、健康でいられるのが基本だ。

 72歳に近い女性は上下の前歯が重なっていたため、歯を1本抜いてうまく並べた。この治療を受けるかどうか半年ほど悩んだが、「やってよかった」と、うれしそうに話した。

日本臨床矯正歯科医会の稲毛滋自会長

日本臨床矯正歯科医会の稲毛滋自会長

 高齢者だけではない。40歳前後の姉妹は、妹の方がまず2回目の矯正を決めた。姉にも矯正を勧めたが、夫から「その年で今さらそんなことをするのか」と反対されたという。しかし、矯正治療の結果として歯並びもきれいになった。

 「目標はあくまでもしっかりしたかみ合わせにすることだ。結果的に美しく見えるようになったのは、『おまけ』が付いてきたと考えてほしい」

 ◇他科の医師と連携

 矯正にはリスクも伴う。特に大人の場合は、痛みが出やすくなったりする、歯磨きがしづらくなり歯周病になるやすくなったりする。また、糖尿病(2型)や骨粗しょう症、心臓病などの疾患がある場合はかかりつけ医ら他科の医師と連携している。

 稲毛氏は「骨粗しょう症の治療を受けている患者は、薬によっては骨が溶かされにくくなっている。こうなると、歯を動かすことは難しい。薬の効力を弱めてもらう必要が生じるケースもある」と話す。

50代後半で治療を受けた女性。80歳を越えても食事は大丈夫

50代後半で治療を受けた女性。80歳を越えても食事は大丈夫

 ◇自身も矯正治療中

 国は「80歳で20本の歯を残そう」と呼び掛けている。東京都文京区は、80歳で20本の歯が残っている人たちを継続的にフォローアップしている。背景には、健康寿命と寿命との差を少なくしたい、という思いがある。

 稲毛氏は「人間ドッグを受診する人は多いが、口の中は不具合が生じない限り、なかなか歯科医にはかかろうとしない。早期に受診すればうまく予防し、歯の病気になっても進行を遅らせることができる」とした上で、「子どもの頃から矯正していれば、生涯にわたり歯の治療に要するコストは小さくなる」と指摘する。

 稲毛氏自身も現在、矯正治療中だ。35歳ごろから右側の糸切り歯がせり出し、50歳を前に右側でかむとズキンと痛みが走るようになった。「これでは、おいしく食事を楽しむことなどできない」と考え、自院のスタッフによる治療を受けている。2020年中には治療を終える予定だと言う。(鈴木豊)

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