医学トップの視座

学生が伸びる自由な学風
医学研究を実地医療に生かす―大阪医科大学

 ◇産官学連携で成果 

 研究成果を人々の健康に生かすための取り組みも進めている。高槻市民の健康寿命の延伸を目指す「たかつきモデル」が、17年度文部科学省私立大学研究ブランディング事業に採択され、大規模な産官学連携プロジェクトとして注目を集めている。 

 市民健康講座などで、かむ力、飲み込む力をチェックし、口腔(こうくう)内のケアを指導するほか、唾液を採取して、口腔内の細菌と動脈硬化、認知症との関連を分析する。すでに1800以上のサンプルを採取した。 

大阪医科大学

 「サンプルは製薬会社にも提供し、糖尿病の早期発見や歯周病のチェック方法などの研究につなげます。病気のサンプルは外来で採取できますが、正常の方は市民の協力が不可欠。これからも市民参加型の運動を広げていきたい」 

 産学連携としては、ほかにも腹腔(ふくくう)鏡手術に用いる単孔式手術用ポート、成長とともに広がって吸収される心臓修復材料、損傷した半月板を置き換える再生基材などの開発が進められており、数年後の製品化を目指す。 

 ◇次世代がん治療拠点 

 臨床面でも大学独自の取り組みとして、頭頚部がんなど体の表面から浅い位置にできたがんを治療する、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を今年6月に開始する予定だ。 

 ホウ素製剤を点滴して、取り込み状況を確認し、適用と判断した上で中性子線を照射する。「重粒子線治療よりも医療費が安く、治療が1回で終わる点が大きなメリット。副作用もなく、30~40分ですむので、海外からの医療ツーリズムも可能」と期待する。 

 適用は限られるが、患者に負担の少ないがん治療法の新たな選択肢として注目される。 

 ◇死ぬほど勉強 

 大槻学長は大阪医科大学の出身。第一解剖学教授、学生部長等を経て、15年に学長に就任した。医学部受験を決めたのは高校3年生になってから。工学部受験を目指していたが、無医村で働く医師を描いたドラマ『孤島の太陽』に感動し、医学部に方向転換した。 

インタビューに応える大槻勝紀学長

 大学時代はソフトテニス部で活躍、部活動で経験した上下関係が、医師人生の中でも役立っているという。子どもが好きで、将来は産婦人科の開業医になるつもりだったが、大学院で基礎研究に没頭し、薦められるままに留学、臨床に戻る機会を逸した。 

 「人生のチョイスは、自分が行きたいと思った場所に求められていくのがベスト。でも、流れに身を任せていくのも一つの方法。目の前のことにベストを尽くしていけば道は開ける」と大槻学長は笑う。 

 部活動に精を出しながらも、寝る間を惜しんで勉強した自らの学生時代を振り返ると、今の学生はまだまだ甘いと感じることが多いという。そんな学生たちには常々「死ぬほど勉強して死んだ奴はいない」とハッパをかける。 

 「リタイア後、田舎で医師として働くという夢は捨てていないんです」という大槻学長。職員とともに大学の進むべき道を模索する一方、学生たちとも正面から向き合う。「できるだけ学生と対話するのが一番のモットー。トイレで会っても、必ずあいさつします。大学の外で会っても、みんなすぐに気付いてくれる。学生や職員、いい人材に恵まれたと思います」 (医療ジャーナリスト・中山あゆみ)

【大阪医科大学 沿革】 

1927年 大阪高等医学専門学校を創立

  52年 大阪医科大学を設立

  59年 大阪医科大学大学院医学研究科設置

2016年 大阪医科大学と大阪薬科大学の法人合併

  18年 関西BNCT共同医療センター竣工

  21年 大阪薬科大学と統合、大阪医科薬科大学に変更予定

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