治療・予防

認知症や狭心症に間違われる例も 
見過ごされやすい高齢者の貧血

 血液中の鉄分が不足して発症する貧血。高齢者の場合、時に認知症や狭心症に似た症状を示す例があって、それらの悪化と誤解して見過ごされるケースがある。東京都健康長寿医療センター(東京都板橋区)血液内科の宮腰重三郎部長に聞いた。 

 ▽鎮痛薬の副作用でも発症

 65歳以上の高齢者では、血液1デシリットル中のヘモグロビン値が11グラム未満になると貧血と診断される。高齢者で多いのは、〔1〕ヘモグロビンをつくるのに重要な鉄分が不足する鉄欠乏性貧血〔2〕感染症や膠原(こうげん)病などの慢性炎症に伴う二次性貧血〔3〕血液疾患が原因となる貧血―だ。

 鉄欠乏性貧血は、消化器のがんや胃潰瘍などにより消化管に出血が生じ、鉄分が失われて発症する人が多い。「腰痛などで多用される鎮痛薬を飲むと、副作用で胃潰瘍が生じることがあるため注意が必要です」と宮腰部長。一方、二次性貧血は、がんや関節リウマチ、感染症などで慢性炎症が起きて貧血になる。

 血液をつくる骨髄自体に原因がある場合もある。高齢者に多い骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫などでは、造血機能に障害が生じて引き起こされる。

 貧血の典型的な症状は、動悸(どうき)、息切れ、倦怠(けんたい)感などだが、高齢者の場合、めまいやふらつきなどは出現しない人が多い。一方で、意識障害や呼吸困難、強い胸の痛み、あるいはもの忘れなど認知症のような症状が表れるケースがある。「狭心症の発作だとして救急搬送された高齢患者が、実は貧血だったという例もあります」

 ▽薬で回復しない貧血

 貧血が疑われる場合は、採血に加えて消化管出血の有無などを調べ、原因に応じた治療を行う。鉄分不足による貧血なら、鉄剤を服用して補充すれば改善する。

 それでも良くならないケースでは、他の病気の可能性を考え、血液内科医を受診する。血液内科医は日本血液学会のウェブサイトで検索できる。

 「1年以上貧血が続き、明らかな原因が不明な場合は『老人性貧血』と診断されます。そうした患者では何らかの病気が隠れている可能性があるため、定期的な受診が必要です」と宮腰部長。

 高齢者に息切れや倦怠感、物忘れなどの症状があっても、家族は「年のせい」と考えて貧血を疑うことは少ないだろう。しかし症状が長引くと、潜んでいた病気が悪化したり、転倒などの危険性が高まったりする。「定期的に健康診断を受けることが大切です。栄養のバランスの良い食事を取り、適度に体を動かせば貧血を予防できます」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)

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