治療・予防

自然治癒なし―鼠径ヘルニア
手遅れになる前に早期治療を

 鼠径(そけい)ヘルニアは、下腹部から脚の付け根にかけての筋膜(筋肉を覆う膜)の間から、腹膜に包まれた腸が袋状に飛び出してしまう病気。治療法は手術のみだが、恥ずかしいからと受診を先延ばしにしてしまう人が少なくない。鼠径ヘルニアの日帰り手術を行う東京デイサージェリークリニック(東京都中央区)の柳健院長は「放置すると、飛び出た腸が戻らなくなり、緊急手術が必要になる場合もあります」と注意を喚起する。

自然に治ることはない。恥ずかしがらずに受診を

 ▽40歳以上の男性多い

 鼠径ヘルニアは一般的に脱腸とも呼ばれる良性の病気。脚の付け根辺り(鼠径部)の筋膜が薄くなっている部分から、腹膜に包まれた腸が腹腔(ふくくう)内から外に飛び出してしまった状態だ。

 患者の9割が15歳以上で、全体の8割超が男性だ。40歳くらいから増え始め、60~80代に多い。加齢によって鼠径部の筋膜が弱くなり、そこに日常的に負荷がかかることで発症する。柳院長によると、重い荷物を運ぶなどおなかに力のかかる仕事や立ち仕事の人、便秘や肥満の人、ぜんそくなどでせきが出やすい人、花粉症などで頻繁にくしゃみをする人などは要注意だという。

 症状は、下腹部や太ももの付け根が膨らんで、おなかに力を入れたときや長時間立ちっ放しのときなどに、下腹部に痛みや違和感が生じる。最初のうちはあおむけになったり、押したりすると膨らみは戻る。しかし、次第に戻らなくなる嵌頓(かんとん)を起こし、血流の悪化から腸が壊死(えし)する場合もある。

 ▽日帰り手術も可能

 診断は視診、触診、超音波検査かコンピューター断層撮影(CT)検査を行う。鼠径ヘルニアと診断された場合、治療法は手術しかない。

 手術では、鼠径部の筋膜の弱くなった部分をポリプロピレン製などのメッシュシートで補強する。切開手術と腹腔鏡手術があり、患者の状態やヘルニアの大きさなどに合わせて最適な方法が選択される。

 2016年11月には、オンステップ法という新しい手術法が保険適用された。従来の手術では約1週間の入院が必要だったが、手順がシンプルなので手術時間は約30分で済み、日帰りが可能。局所麻酔と静脈注射による鎮痛薬の投与のみで、全身麻酔は不要だ。切開する長さは2センチ程度なので、傷が目立たず、術後の合併症や違和感が少ない。治療費は診察代を含めて約4万5千円(3割負担の場合)だが、この手術が適応になるのは男性患者のみだという。

 柳院長は「ヘルニアは次第に大きくなり、自然に治ることはありません。恥ずかしがらず、早めに治療を受けてください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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