高齢者に多い腰回りのかゆみ―多形慢性痒疹
自分に合う治療法探して(独協医科大学埼玉医療センター皮膚科 片桐一元教授)
多形慢性痒疹(ようしん)は、赤くなった皮膚の上にぽつぽつとした発疹ができて非常にかゆい。しかし症状は、皮膚が赤いだけの場合や、発疹ではなくじんましんのように平らに盛り上がるなどさまざまで、診断されにくい。独協医科大学埼玉医療センター(埼玉県越谷市)皮膚科の片桐一元教授は「多形慢性痒疹は、湿疹やじんましんと間違われることもあります。諦めずに自分に合った治療法を皮膚科医と一緒に探していきましょう」と話す。
長期間続く強いかゆみ。湿疹やじんましんなどと間違われることも
▽診断の遅れ多く
多形慢性痒疹は、下腹部や脇腹、腰部などに発症しやすい。数時間~1日ほどで消失するじんましんとは違い、かゆみは何日も続き、なかなか症状が治まらない。中には10年以上もかゆみに悩まされている人もいるという。
平均発症年齢は70歳前後で、20~30代前半の若い世代にはほとんど見られない。片桐教授は「典型的な症状が少ない場合や、なかなか治らず医療機関を転々とした場合、結果的に診断が遅れてしまうことが多々あります」と指摘する。似た症状を示す丘疹(きゅうしん)紅皮(こうひ)症という病気もあり、さらに診断を難しくしている。発症の原因はまだ分かっていない。
▽保険適用外の治療法も
多形慢性痒疹は、ステロイド外用薬やかゆみ止め(抗ヒスタミン薬)が効きにくい。片桐教授は、治療法として2種類の抗ヒスタミン薬の併用を提唱している。デスロラタジンに、フェキソフェナジンやオロパタジンといった異なる抗ヒスタミン薬を組み合わせて服用する。これで治らない場合は、マクロライド系の抗生物質や神経障害性疼痛(とうつう)治療薬などを加えていくという。「保険適用外の治療法ですが、大半の方に症状の改善が見られます」と片桐教授。治りにくい場合は、特定の紫外線を皮膚に当てる紫外線療法や免疫抑制薬の内服も加えていく。ただし、薬を減らすと再発を繰り返すこともあるため、医療機関で自分に合った治療法を続ける必要がある。
多形慢性痒疹はがんとの関連があるとも言われている。どの治療も効果がない場合は、がんを疑い検査を行うこともある。
片桐教授は「保険制度上、都道府県によっては、1回の受診で2種類以上の抗ヒスタミン薬を処方できない地域もあります。治療効果には個人差があるので、皮膚科専門医によく相談して治療方法を決めるのがよいでしょう」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2020/11/02 06:00)
【関連記事】