Dr.純子のメディカルサロン

コロナ禍で気になる「帯状疱疹」
~早期の発見・治療が重要~ 第52回

 新型コロナウイルス感染症の拡大が続いています。生活環境が変化して、働き方が変わった人や経済状況が大きく変わった人など、ストレス状況が継続しています。

 そうした中で今、気になっているのは、帯状疱疹(ほうしん)発症で病院を受診する人が増えていることです。

 帯状疱疹というと、50歳以上の人が発症するというイメージがあるのですが、20代、30代の若い世代の人が発症することもあり、注意が必要です。

マスク着用が当たり前の生活。マスクによるいつもの湿疹と思い込んで帯状疱疹と気付かないことも(写真はイメージです)【時事通信社】

マスク着用が当たり前の生活。マスクによるいつもの湿疹と思い込んで帯状疱疹と気付かないことも(写真はイメージです)【時事通信社】


 ◆顔面に神経まひ

 20代後半の企業事務職のAさん(女性)は、イヤホンをしようとして、右の耳介(耳の見えている部分)に痛みがあるなと思ったそうです。

 気が付かないうちに引っかいたのか、と思っていたのですが、そのうち、ピリピリと痛みが続き、近くの耳鼻科を受診しました。

 すると、耳介に発疹があり、帯状疱疹が疑われると診断を受けました。さらに医師から、右の口元がわずかに閉じにくくなっており、軽い顔面神経まひを起こしていると指摘され、すぐに抗ウイルス剤の投与を受けました。

 発症からすぐに受診し、治療を受けたので、顔面神経まひも、比較的早く改善し、後遺症もなく済んだということです。

 「マスクをしていたので、仕事中に化粧直しで顔を見る機会が少なくて、唇が閉じにくくなっていることに気が付かなかった」と、Aさんは言います。

 ◆後遺症が残ることも

 ただ、このように早めに受診して、治療を受けられればいいのですが、発症してから時間が経過した場合は、後遺症が残ることがあるのです。

 40代のBさん(男性)は、耳の周りの痛みや肩こり、頭痛などが数日続いていましたが、鎮痛剤を飲みながら過ごしていました。

 在宅勤務で、あまり外出をしたくない気持ちがあったことや、これまで大きな病気もなく、健康診断でも異常がないので、暑さのせいだと考えていたそうです。

 4日目になり、痛みが強くなって、顔のまひに気が付き、驚いて耳鼻科を受診、帯状疱疹による顔面神経まひと診断されました。

 現在、抗ウイルス剤の治療を受けていますが、治療開始が遅れたため、まだ顔のまひは完全には回復していない状態です。

 ◆若い世代でも発症

 帯状疱疹の原因になるのは、子どもの頃にかかった水痘(みずぼうそう)ウイルスです。

 このウイルスは、水痘が治った後も神経節(顔面の三叉神経、脊髄神経、座骨神経など)に数十年間も潜伏します。

 ですから、大人は9割で体内に水痘ウイルスを持っているとされていますが、免疫力が強い間は、活動は抑制されています。

 ところが、ストレスや加齢・疲労などの状況が起こると、神経節の中に潜伏していたウイルスが活動するのです。

 40歳以上になると、発症率が高く、患者さんの7割は50代以上とされていますが、若い世代でも、ストレスなどで発症するので、油断はできません。

 ◆「72時間以内」が決め手

 身体の片側に痛みが強い発疹が出たという場合は、速やかに受診することをお勧めします。

 というのも、治療は水泡を伴う発疹ができてから、72時間以内に行うか否かで、後の後遺症の有無に大きく影響するからです。

 早めに抗ウイルス剤の治療を受けると、その後の「帯状疱疹後神経痛」を起こさずに済むことが分かっています。

 今の時期は、マスクなどで湿疹がある人もいて、痛みがあっても、いつもの湿疹と思い込み、帯状疱疹と気が付かずに受診が遅れることもあるので、気を付けていただきたいと思います。

 新型コロナウイルスの感染拡大による生活習慣の変化が、自分では気が付かないストレスとして持続していたり、睡眠時間の不足や食事時間、食事のバランスが変化することにより、体調が万全でない場合は、より注意が必要です。

 ◆「首から上」に注意

 帯状疱疹で注意が必要なのは、首から上の部分にできるタイプです。

 というのは、帯状疱疹は、神経に沿って障害を及ぼすため、目や耳の神経を傷付けると、その後、角膜炎を起こして視力低下につながったり、難聴や耳鳴りを起こしたりすることがあります。

 治療は、抗ウイルス剤の内服と抗ウイルス剤の軟膏が中心ですが、3日以内の治療開始が予後の決め手になります。

(文 海原純子)


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