肝がんの集学的治療
岡本、小池両医師に聞く(上)
◇多様な診断方法
―エコーで造影剤を使うと、どのように見えるのか。
小池 造影剤は血液の流れに沿って動く。肝細胞がんは血流に富む腫瘍だから、造影剤を使うことにより鮮明に映る。また、時間が経過すると今度は肝臓の正常な細胞に取り込まれる。そうすると逆に腫瘍の部分が抜けて映る。この二つを使ってその塊が腫瘍かどうか確認できる。ターゲットが三つ以上だと難しいが、一つなら定時的に見て行ける。時間とともに染まる、抜けるという変化を確認できる。
岡本 エコーとCTは大ざっぱなスクリーニングで使い、ある程度ターゲットが絞れたらMRIを使う。CTは造影剤を入れた時のパターンなどで認識するが、MRIは生物学的な特徴を放射線学的に鑑別。脂肪が多いとか血管の塊とか、がんとかある程度推察できる。
―足の付け根の動脈からカテーテルを肝臓まで挿入してX線撮影を行う肝血管造影検査や、超音波画像で観察しながら肝細胞の一部を採取する肝生検は検査でどのように使うのか。
小池 血管造影検査は診断だけの場合にはあまりやらない。エコー、CT、MRIである程度診断がつく。見えない腫瘍を見つける場合や、肝動脈塞栓術という治療を念頭に置いて行う場合はある。また、肝生検は針を刺すので当然痛いし血も出る。他の画像診断でも分からなかったときに限ってやるのが一般的だ。診断の順番ではかなり下の方になる。
◇状態踏まえた標準治療
―肝がん治療は現在どのような形で行われているのか。
岡本 内科、外科などが別個に単独治療を行うのではなく、共同でさまざまな治療法を組み合わせる集学的治療が一般的になっている。肝がんは発症する原因が必ずあるので、それをコントロールしない限り一度治療しても再発する。例えば肝臓の3分の2ぐらいを占める腫瘍があった場合、元気な肝臓の人ならそれを全て切除することができる。しかし肝硬変末期の人はもう切除できないので、違う治療をしなければならない。肝臓の障害程度、腫瘍数、がんの大きさの三つの要素を踏まえ、内科、外科、放射線部または内視鏡部で一緒に治療法を決める。
障害度は肝臓の良しあしのこと。全く健康な肝臓にがんができたのか、それともB、C型肝炎もしくはアルコール性の肝硬変なのか。腫瘍数では、たくさんあれば全部取るわけにはいかないので最初は薬で直すとか。遠隔転移といって肝臓がんが肺だとかリンパとかに飛んでいる場合も、治療法が変わる。そして最後にがんの大きさ。がん治療は切除が基本なので、腫瘍はもちろん取った方がいい。ただ内科的治療の方が効果的な場合もある。血管に薬を入れる方法、腫瘍を焼く方法、また最近はがん細胞を狙って作用する分子標的薬がある。一概に大きく切るだけがいいとは言えなくなった。
肝臓がんの標準治療(アルゴリズム)は、この三つの要素を基に決まっている。障害度A、Bで腫瘍が1個なら肝切除、残念ながらCだと肝移植などの方法しかない。障害度Aで腫瘍1個なのに肝移植するのは標準治療ではない。患者にもガイドラインに沿った説明をする。
(2017/03/02 13:03)