医学の窓辺

ウィルスの拡散防止する行動獲得のためのVR教育コンテンツの開発

 ◆発表のポイント

・バーチャルリアリティ(VR)(1)技術によって生み出された仮想空間内で医療行為を通したウィルスの拡散・伝播状況を疑似体験することで、現実世界における医療従事者の感染対策行動を促す教育コンテンツを開発しました。
・現状では、病室の環境清拭用コンテンツを通してウィルスの付着や除去の状況が確認できます。
・今後、様々なシチュエーションを想定し教育コンテンツを充実することで、院内感染対策への貢献が期待されます。

 岡山大学学術研究院医歯薬学域 萩谷英大 准教授、ヘルスシステム統合科学学域 五福明夫 教授、工学部創造工学センター 柴田光宣 技術専門職員、廣田聡 技術職員の研究グループは、医療従事者の感染対策意識を向上させるためのツールとして、バーチャルリアリティ(VR:Virtual Reality) を適用した教育コンテンツを開発しました。本コンテンツでは、市販の VR システムを用い、通常目に見えないウィルスを仮想空間内の医療環境において視覚化しました。この仮想空間内で実際の医療現場で行われる診療・看護を行い、医療行為を通したウィルスの拡散・伝播状況を疑似体験することで、現実世界における手指衛生等の適切な感染対策の実施を促すことを目的としています。これまでに、病室の環境清拭用コンテンツを開発しましたが、順次、薬・文書の病室内配送、点滴バッグ交換、点滴ライン確保、手術創部観察・ガーゼ交換、尿量測定、おむつ交換などの様々なシチュエーションを想定したコンテンツを開発し、医療従事者向けの教育プログラムの開発へと発展させる予定です。

 ◆研究者からのひとこと

萩谷准教授

 萩谷英大 准教授 新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、医療従事者全般における基本的な感染対策の重要性を浮き彫りにしました。VR 技術を用いて医療環境における微生物の伝播状況を疑似体験することで、現実世界での行動改善につながることを期待しています!

五福教授

 五福明夫 教授 この教育コンテンツを試用した時、手指衛生に気をつけた行動を採らないと、こんなにあちこちにウィルスが付着するのかと愕然としました。まだまだ研究開発すべき点は多いですが、この教育コンテンツにより、急ぎの場合でもウィルスができるだけ拡散しない行動を医療従事者が無意識に採れて院内感染を防ぐことに役立てば嬉しいです。

 ■    発表内容

 <現状>

 新型コロナウィルス感染症をはじめとした様々な感染症の蔓延を防止するためには、集団免疫の確立(ワクチン接種)、物理的な感染経路の遮断(隔離診察)、個人防護具(マスク・ガウン・アイガードなど)の充実とともに、医療従事者一人一人の日常的な感染防止行動が重要です。感染防止行動としては手指衛生が最も重要で、WHO(世界保健機関)は2009 年に”5 Moments for Hand Hygiene”
(手指衛生のための 5 つの場面)を提唱し、医療従事者における手指衛生行動の改善を啓発してきました。しかし、微生物は目に見えないことから、どのような医療行為・環境で感染リスクが高いのか、実感し難いという課題がありました。

 <研究成果の内容>

 岡山大学学術研究院医歯薬学域 萩谷英大 准教授、ヘルスシステム統合科学学域 五福明夫 教授、工学部創造工学センター 柴田光宣 専門技術職員、廣田聡 技術職員の研究グループは、バーチャルリアリティ(VR:Virtual Reality)を適用した教育コンテンツを開発しました。この教育コンテンツでは、市販の VR システムを用いて、目に見えないウィルスを仮想空間内の医療環境において視覚化しました。この仮想空間内で実際の医療現場で行われる診療・看護を行い、医療行為を通した ウィルスの拡散・伝播状況を疑似体験することで、現実世界における手指衛生等の適切な感染防止 行動につながるよう支援します。これまでに、図に示す病室の環境清拭用コンテンツを開発しましたが、順次、薬・文書の病室内配送、点滴バッグ交換、点滴ライン確保、手術創部観察・ガーゼ交 換、尿量測定、おむつ交換などの様々なシチュエーションを想定したコンテンツを開発し、医療従事者向けの教育プログラムの開発へと発展させる予定です。現状ではコントローラで病室ドアの開閉、カートの移動、病室内の物体把持などの操作を行う必要があり、操作性に課題がありますが、今後はデータグローブを用いて自然な操作感で疑似体験できるように開発を進める予定です。

 <社会的な意義>

 本技術・教育コンテンツは、新型コロナウィルス対策に留まらず、インフルエンザ・ノロウイルス・薬剤耐性菌など様々な感染対策に応用することが可能です。院内感染を最小限にし、患者・医療従事者の安全確保につながります。また、言語を要さない教育プログラムであり、グローバルな展開も期待されます。

 ■    研究資金

 本研究は、公益財団法人 西川医療振興財団(2020 年度医学研究活動費助成事業助成金)の支援を受けて実施しました。

 ■補足・用語説明

 (1)バーチャル・リアリティ(VR:Virtual Reality)
 コンピュータによって描画した仮想世界をゴーグル型のディスプレイによって表示することにより、あたかも現実世界と同等の感覚を持たせる技術。類似の技術に、現実にある対象物にコンピュータ表示を付加した拡張現実感(AR:Augmented Reality)や、現実と仮想を等価に融合した複合現実感(MR:Mixed Reality)などがある。

 <お問い合わせ>
 岡山大学 学術研究院 ヘルスシステム統合科学学域教授    五福    明夫

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