女性医師のキャリア
外科医を目指す女性のために
~新たな道をどう切り開くか~ 女性のキャリアを考える Vol.1
集合写真
◇理想の相手と結婚するためには内面を磨く
医師になって、1、2年は仕事に慣れるのに必死で、土日に呼び出されたり、勉強することも多く、とにかく忙しくて、自分から求めないと出会いはないかもしれません。本当は出会っていても気が付いていない可能性もあります。心の余裕は残しておきながら仕事をしたほうがいいかもしれませんね。自分が理想とする男性に巡り会って結婚するには、相手にばかり求めるのではなく、やはり自分の内面を磨いておくことが大切だと思います。相手が幸せにしてくれるのを待つのではなく、自分から幸せを求めていかないと。私にとって、自分が自分でいられる人が理想の相手かな。一度きりの人生だし、やりたいことを許してくれて、応援してくれる人がいいですね。
かつては仕事か家庭のどちらかの選択肢しかなかったけれど、今は両方選択することも可能になってきています。外科に入っても家庭も持って両立することができるので、若い人たちには、やりたいことをやってほしいですね。
◇お互いに尊重し合えるパートナーを選ぶ
どういう相手と結婚するかによって仕事が続けられるか否かが決まります。私は学生の頃から視野が狭くならないように分野の違った会社員との結婚を希望していました。ただ、そういう人と出会う機会がなく、大学時代の同級生に頼んで紹介してもらったのが現在の夫です。医師の仕事は医師じゃないと理解できないという方がいますが、そんなことはありません。夫は医師という職業を尊敬し、仕事を続けることに対して理解してくれています。結婚後、お互いが忙しすぎたら不和の原因になりかねないので、結婚する前に家庭と仕事を続けることへの理解があるかどうかは確認しておく必要があります。
◇「人生は一回きり」今この瞬間にベストを尽くす
部下から「どうやってそんなに高いモチベーションを維持できるのですか?」とよく聞かれます。私は20歳の時に死んでもおかしくないような大きな交通事故を経験し、その時に「人生は1回きり」だと強く思いました。あしたの保証は誰にもありません。だから今この瞬間ベストを尽くそうと思うようになったのです。生かしてもらった生命をどう生かすか、人の役に立つことを常に意識して行動しています。交通事故の前と後では自分の考え方が大きく変わり、まさに生まれ変わったのです。これが私の原動力になっています。
人生には限りがあって、なんとなく過ごしていると本当にあっという間で、過ぎた時間は2度と戻りません。最近は何よりも時間が大切だと思うようになりました。時間は私たちの生命そのもの。だからこそ、この大学での3年間は決して無駄にしてはいけないという気持ちが高まっています。今の歳から逆算しても元気に外科医として仕事ができる残り時間はそんなに長くはないのです。日々一生懸命取り組む積み重ねが10年20年たった時に大きな違いになりますから、今この瞬間を大切に、やりたいことに打ち込んでほしいと思います。特に医師の仕事は技術の他に人間力を地道に磨いていくことが大切です。人間力は1日では身に付きません。結局は、その人がどういう生き方をしてきたかです。学生のうちにいろいろな人の話を聞いて、さまざまな人生があることを学んでいくことはすごく貴重な経験です。できれば国内だけにとどまらず海外にも見識を広げていってほしいですね。
◇目標を達成するまで諦めずに何度もやり続ける
リチャード・ニクソンも「人間は、負けたら終わりなのではない、諦めたら終わりなのだ」という言葉を残しています。私は本当にその言葉が好きです。1回やって諦めたら失敗ですが、9回やっても諦めずに10回目に達成したら、それは失敗にはならない。目標を達成するまで何度もやり続ける。私はこれを意識してやっています。時にはしぶとく挑戦しても達成できないこともよくあります。けれども頑張って何度も挑戦していると、ふとした拍子に光が差し込んでくることがあるのです。
私の体験談で言えば、前例のないことをして、総理官邸にご招待いただき、安倍前首相・片山前女性活躍担当大臣に会い、今は厚生労働省で働き方改革の労働教育法の医学部の教材作りをしています。何度もたたかれながらも、いろいろな人に助けられ、頑張って地道にやってきた結果かなと思っています。すぐ諦めず、続けることが大事だと思いますね。もちろん、思い通りにならないとつらくなり、未来のことを考えると不安になりますが、心がけているのは、とにかくきょう1日この瞬間に集中することです。そうすれば余計なことを考えることなく、やるべきことに全力で取り組めます。依頼されたことは100%ではなく120%で返すように心がけていますし、期待以上のものを提供したいという気持ちの積み重ねが今の私を形作っていると思います。
◇女性外科医の新しい生き方を示したい
今までは男性医師と同じようにキャリアを積んで役職につくことが女性医師のサクセスストーリーだと思っていました。でもそれが全てではないと思い始めました。
現在、女性医師用の医療機器の研究開発に取り組んでいます。卒業後20年たってから役職も持たずに大学にいきなり飛び込むなんて無謀だと言う人もいましたが、自分が世界中の患者に希望を与え、役に立つ仕事ができるチャンスがあるならやってみようと思い立ち、大学に飛び込んで時間と環境を確保しました。自分が開発した女性医師用の機器が世界中で使われるようになれば、結果的に良い手術ができて、目の前の患者だけではなく世界中の患者の役に立つことができます。
この研究や機器が認知されるようになれば、女性外科医の新しい生き方を若い世代に提示できるのではないかと思っています。スーパードクターを目指すことだけが外科医のキャリアではなく、私のように普通に結婚し出産して、社会的に意義のある仕事に就いている新しい外科医の生き方があることを若い世代に知ってもらい、少しでも外科に興味を持ってもらえればと思います。決して簡単な生き方ではありませんが、これも私のチャレンジなのです。
*学生団体メドキャリ
医療系の学生が自分らしいキャリアを考えるために2018年に発足した学生団体。キャリアに関するイベントや情報発信などの活動を行い、医療系の学生や若い医療者が広い視野を持てるように学びの機会や交流の場を提供している。facebookページ
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(2021/09/27 08:47)