十分寝ても昼に眠気―特発性過眠症
~睡眠の専門医受診を(すなおクリニック 内田直院長)~
夜十分に眠っても日中に強い眠気に襲われる特発性過眠症は、睡眠障害の中では比較的よく見られるが、一般的な睡眠不足との違いの見極めは難しい。すなおクリニック(さいたま市)の内田直院長は「背景にさまざまな問題があることが多い病気です。必ず睡眠の専門医を受診してください」と話す。
強い眠気による仕事や家事への影響が3カ月以上続く
▽発達障害に併発も
睡眠は、脳内の睡眠中枢が覚醒中枢を抑制することで誘発され、日中は、睡眠中枢が抑制されて覚醒中枢が活発になる。特発性過眠症は、こうした睡眠と覚醒の中枢に異常が起こる中枢性過眠症の一つだ。
内田院長は「夜十分に寝ているのに起床が困難で、日中に強い眠気が襲い、頭がボーッとして作業中に眠ってしまうなど、仕事や家事にも影響が出る状態が3カ月以上続きます」と説明する。
患者数は不明だが、同じ中枢性過眠症のナルコレプシーは600人に1人とされ、特発性過眠症も同じ頻度だと推測される。近年、発達障害との併発が少なくないことも分かってきた。
「睡眠は、深いノンレム睡眠から浅いレム睡眠へと移行する約90分の周期が繰り返されます。最初にレム睡眠が出現するナルコレプシーのような特徴はありません」。ノンレム睡眠とレム睡眠の割合も、一般的な睡眠と大差なく、原因は分かっていない。
▽覚醒維持の薬で治療
診断は、普段の生活から睡眠不足がないか、睡眠時無呼吸症候群など深い睡眠を妨げる病気や、体内時計が狂って眠くなる時間帯がずれる睡眠覚醒リズム障害がないかなどを確認する。「子どもの頃からの睡眠習慣や発達障害の有無も調べます」と内田院長。
さらに、睡眠潜時反復検査(MSLT)で、眠気の程度を評価する。同院では簡易型の睡眠計測装置を腕に装着し、検査前夜の睡眠時間や睡眠時無呼吸症候群の有無を調べ、当日はクリニックで2時間置きに20分間の昼寝を4、5回繰り返す。睡眠開始までの平均時間が8分以内で、入眠時にレム睡眠が見られなければ特発性過眠症と診断する。
治療は覚醒を維持するモダフィニルという薬を用いる。日中の眠気が減り、生活が格段に改善するが、根本から治療する薬ではないため、症状がある限り服用が必要になる。内田院長は「一人ひとり何に困っているかを主治医とよく相談し、一つずつ解決していってください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/12/09 05:00)
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