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健康診断や人間ドックを生かすには
~受診後のフォローを忘れずに~ 医学博士 福田千晶

 コロナ下の医療の世界では、新型コロナウイルス感染症の患者さんの対応以外にもさまざまな問題が生じています。心配されていることの一つが、健康診断や人間ドック、がん検診を受けそびれている人がいることです。基礎疾患のある人がコロナに感染すると重症化しやすいと言われていますから、健康管理の重要性は、ますます高まっています。

医療機関がコロナ患者への対応に追われる中、受診控えの影響が懸念される(AFP時事)

 ◇心配される「コロナ禍を理由に受診控え」 

 コロナ感染が広まり始めた2年前は、「健康診断のような不要不急の受診は控えるように」という意見も確かにありました。また、当時はコロナ感染の患者さんを受け入れている医療機関を受診することは、感染リスクになると恐れて受診しない人もいました。

 さらに、「健康診断や人間ドック、がん検診はできれば受けたくない」という人がいるのも事実です。その人々にとっては、コロナ禍は受診しない言い訳になったのでしょう。

 健康診断、人間ドック、がん検診を嫌がる人には幾つかの理由があるようです。

・なんとなく面倒くさい
・仕事の都合があり、受診日を決めにくい
・採血、胃の検査など苦痛を伴う検査が苦手
・悪い結果が出たら怖いから

などが主なものでしょう。「予定を決めて予約して、当日は朝食抜きで○時までに〇〇病院へ」となると、面倒なのも理解できます。

 採血やバリウムを飲む胃のレントゲン撮影、あるいは胃の内視鏡検査など、不快感を伴うような検査があると先延ばしにしたくなるのも納得できます。

 悪い結果が出るのが怖いという気持ちは分かりますが、別の考え方をすると「今、健康の問題に気付いたからよかったけれど、遅れたら大変だった」ということもあります。

 ですから、健康診断や人間ドックはちょっと面倒でも怖がらずに受診して、もし異常所見があれば早く生活改善とか薬での治療などを始めたほうが賢明と思われます。

 がん検診も、この2年間は受診率が下がっているようですが、がんも早期発見と早期治療がとても大切な病気ですから、受けるべき時期に受診していただきたいです。

健康診断の結果は経年変化を確認することが大事

 ◇「健診」と「検診」、「健診」と「人間ドック」の違い

 「健康診断」を略して「健診」と言いますが、「がん検診」などで使う「検診」とは意味の違いがあります。

 「健診」は体の全体的な状況を大まかに調べて、異常を早期に発見することを目的とした検査の機会です。一方、「検診」は特定の病気を発見するのが目的ですから、がんを見つけるためなら「がん検診」となります。

 「人間ドック」は定期的な健康診断より詳しい検査で、検査項目は受診する医療施設によって多少は異なりますが、一般的には眼圧・眼底検査、胃のレントゲン検査(バリウム検査)もしくは胃内視鏡検査(胃カメラ)、腹部エコー検査などが加わります。

 時々、「何歳から人間ドックを受けた方がいいですか?」と質問されます。正解はありませんが、病気が増え始める40歳ころから、可能なら人間ドックを受けるとよいと思われます。特に、血のつながりのある家族や親族に病気の多い家系の人や、健康的ではない生活をしていて不安がある人は人間ドックを受診するか、もし健康診断の受診時にオプションで検査項目を豊富にできるなら、不安な要素のある範囲の検査を追加するとよいでしょう。

健康診断のフォローアップや自治体のがん検診の機会も活用したい

 ◇大切なのは受診後のフォロー

 健診やドック、がん検診で大切なのは、実は受診した後です。「結果が届いても封筒さえ開けていない」「検査結果をきちんと見ていない」とは、もったいないです。

 生活習慣病は、発症初期や予備軍の段階では自覚症状がないことがほとんどです。ですから自ら病気に気付くことはできませんが、検査で早期に発見されれば、運動習慣や食生活の見直しなど生活習慣の改善などで病気の発症を予防したり、進行を抑えられたりする状況もあります。

 がんも、特に早期では自覚症状がない場合があります。しかし、早期発見により負担の少ない治療で完治できる場合も多いのです。病気の早期発見ができるか否かで、その後の人生が大きく変わるとも言えます。

 また、毎年の検査値を見比べて、悪化していないか確認することも健康管理に役立ちます。例えば「血圧が徐々に高くなってきた」「尿酸値が以前までは余裕で正常値だったけど、今年はギリギリで正常値」とチェックして、さらに「リモートワークで歩かないからかなぁ?」「最近は飲み過ぎかなぁ?」と生活を振り返ることが大切です。

 検査結果を項目ごとに見るだけでなく、肥満、血圧上昇、高血糖、脂質異常などは複数で検査値が悪化していないかも調べておきたいことです。

 もちろん結果が「要精密検査」「要治療(要医療)」なら、すぐに適した科を受診して医師に相談してください。もしくは「要再検査」「3カ月後、経過観察」「6カ月後、経過観察」と指示されたら、その時期に医療機関を受診して、検査を受けて経過を見ることが大切です。

 特に、がん検診では「精密検査が必要ということは、きっとがんだから怖い」と考える人もいます。しかし、放置して手遅れになるのはもっと怖いことです。精密検査で「異常なし」「問題なし」「心配なし」となることも多いのです。

 以前、私は大学病院のリハビリテーション科に勤務していました。高血圧や高血糖や脂質異常を健康診断で指摘されていたのに放置して、おそらくそれが原因で脳出血や脳梗塞になり、半身まひになり、「早く生活改善や治療をしておけばよかった」と後悔した患者さんをいっぱい診てきました。そんな後悔をする人が一人でも減ることが願いです。(了)


福田千晶氏

 ▼福田千晶(ふくだ・ちあき)

 慶応義塾大学医学部卒業、医師として東京慈恵会医科大学病院リハビリテーション科勤務を経て、クリニックでの診療と産業医業務を行う。勤務医時代に、エッセーや論文のコンテストでの受賞などをきっかけに執筆活動も開始し、健康に関するテーマで著書や監修書は多数。

 日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会人間ドック健診専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本体力医学会健康科学アドバイザー。


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