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もしかしたら「病気のサイン」かも?
~不眠、食欲不振、痛み…放置せず対処を~ 医学博士 福田千晶

 病気の中には突然発症したり、あっという間に重症化したりするものもありますが、それ以前に体がSOSを発している場合があります。この連載コラムも今回で最後。締めくくりに、日頃から気を付けていただきたい病気のサインについて考えてみましょう。

睡眠の質をチェックするアプリも

 ◇睡眠の問題

 人間は一般的に一定の時間起きていると眠くなり、眠りに就くのですが、「眠れない」という人もいます。「寝付けない」「夜中に目覚めてしまい、その後は眠れない」「眠りが浅い」など、睡眠の悩みもいろいろあります。

 不眠症で眠れなくなることはありますが、他にもメンタル疾患、高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、他の病気の治療薬の影響、その他にもいろいろな健康状態が睡眠には関わっている可能性があります。

 眠れなくなってしまい、思い当たる原因を取り除いても眠れなさが2週間以上も続く場合は、病気が潜んでいることがあり得ます。医療機関を受診して相談することが望まれます。また、常に眠れずに悩んでいるなら、受診して相談するとよいでしょう。

 ◇食欲がない、食べられない

 食欲があり過ぎて食べ過ぎに悩む人がいる一方で、食べられない悩みの人もいます。おなかがすいているはずの時間なのに、好きな食べ物やおいしい物を目の前にしても食欲がわかないのは健康上の問題があるのかもしれません。胃炎をはじめとする胃腸の疾患、胃がんなどの悪性腫瘍、肝臓疾患、腎臓疾患、甲状腺疾患、心不全、うつ病、神経性食思不振症(拒食症)など、さまざまな病気によるのかもしれません。

 また、生活上に思い当たる原因があるか考えてみましょう。「二日酔い」「体を動かしていない」「不規則な生活で食事時間が不定」「最近、食べ過ぎが続いて胃腸が疲れ気味」など、原因になりそうな要因がある場合は、その原因を取り除いて消化の良い物を食べて体を観察するとよいです。

 「深刻な悩みごとがある」「つらいことがあった」「忙し過ぎた」など、食べられないことに関わる事象があったなら、心身を楽にできる方法を考えましょう。問題を解決することを試みるとともに、ゆっくりした時間を過ごすなど工夫してみましょう。

食欲不振の原因はさまざま

 どちらの場合も、数日たっても回復しないようなら病気かもしれませんし、腹痛、嘔吐(おうと)や吐き気、下痢、体重減少がある場合は速やかに医療機関の受診が必要でしょう。

 ◇何となく具合が悪い

 学生時代に小児科の授業で、「子どもが元気がないときは病気を疑え」と教わりました。確かに、子どもたちは風邪をひいて熱が出たり、おなかが痛かったりすると元気がないことがよくあります。

 大人でも同じことで、頭痛や腰痛、歯の痛みでも「何となく元気がない」となります。
かつて勤務していた大学病院のリハビリテーション科では、脳梗塞や脳出血で身体の障害や言語障害などを有する患者さんを診ていました。脳出血や脳梗塞は突然に発症する病気とされていますが、「今になって思い出すと前触れというか病気のサインがあった」とおっしゃる患者さんが何人もいらっしゃいました。

 「ちょっと手がしびれたけど、すぐに治ったから大丈夫と思っていた」とか、「家族が、ろれつが回らない様子と感じたらしいけど、そのうちに治ったから気にしなかった」などという、軽度だけど前触れ症状と思われるサインを呈していた人もいました。

 また、「何となく体調が悪かった」「疲れが取れずにおかしいと思っていた」「職場で具合が悪そうと言われていた」など、明瞭な症状ではないけれど、全身の様子がいつもと違うというサインがあったのだと思われます。

 その時点で受診すると、予防ができたり、速やかに治療ができて障害が軽くなっていたりした可能性もあります。もちろん、受診しても「脳に異常はないですね」と言われて帰宅したが、やはり発症したという経過になることもあり得ますが…。

痛みは体からの明瞭なサイン

 ◇痛みがある

 痛みこそ明瞭な体からのSOSサインです。自然に出現した痛みは、何かの病気や不調が関わっている可能性が高いでしょう。

 痛みの強さや状況、部位などによって受診するタイミングや受診すべき科は異なりますが、痛みは体のどこかの異常に気付いて受診につなげるサインの一つと言えます。

 腰痛、膝痛などを抱えていると、「悪天候の前になると痛くなる」という人も多いでしょう。これは、「天候が悪くなると危険だから、足腰が悪い人、弱っている人は外出を控えるように」という自然の危険回避手段なのかもしれません。

 生理痛も、「過労にならず、少し休んでもよいのでは?」という女性を守るサインとも考えられます。また、この時期の性交は妊娠できる可能性がほとんどない上、血液を通しての感染リスクもあるので、体調が悪くなることで「この時期は性交はしない方がよい」という自然のお知らせとも思えます。

正しい情報に基づいて健康管理を

 ◇過去の検査結果を過信しない

 体調が悪くても、「きっと大きな病気ではない」「自分は健康だから大丈夫」と思いたいものです。しかし、その過信が時には病気の予防や早期発見の機会を逃してしまうことになりかねません。

 「昨年の人間ドックで、胃の内視鏡検査は異常なかったから胃は大丈夫なはず」と話す人がいます。しかし、人間ドックや健康診断の「検査結果が異常なし」というのは、その時点ではその検査項目は異常がなかったということであり、「今後、一年間は病気にならない」と保証するものではないのです。自動車の車検で「異常なし(問題なし)」でも、次回の車検の時期まで故障することなく、交通事故も起こさないと保証できるはずがないのと同じです。

 また、人間ドックや健康診断で行う検査項目が全てではありません。症状がある場合は、さらに詳細な検査を行うべきこともあるのです。

 いろいろな体調不良がありますが、その後の日々を元気で長く生きるために備わった危険信号です。心身からのSOSに気付いたら、自分をいたわったり、病気の発症予防に努めたり、受診して検査や診察を受けたり、治療したりして状況を改善するように心掛けましょう。SOSを無視したり、否定したりしないで、きちんと対処して、「もっと元気に、ずっと元気に」を目指したいものですね。(了)


福田千晶氏

▼福田千晶(ふくだ・ちあき)

 慶應義塾大学医学部卒業、医師として東京慈恵会医科大学病院リハビリテーション科勤務を経て、クリニックでの診療と産業医業務を行う。勤務医時代に、エッセーや論文のコンテストでの受賞などをきっかけに執筆活動も開始し、健康に関するテーマで著書や監修書は多数。

 日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会人間ドック健診専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本体力医学会健康科学アドバイザー。

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