新内服薬で「こぶ」が縮小
~管腫などのリンパ管疾患(岐阜大学医学部付属病院小児科 小関道夫臨床准教授)~
体の隅々から老廃物を回収するリンパ管が膨らむリンパ管腫などの疾患は、有効な治療が手術などに限られていたが、2021年9月に新たな内服薬が承認され、比較的簡便に病変を縮小させる治療法が加わった。新薬開発を主導した岐阜大学医学部付属病院(岐阜市)小児科の小関道夫臨床准教授に聞いた。
新たな内服薬が治療に使えるようになった
▽多くは小児に発症
リンパ管疾患(リンパ管腫やリンパ管腫症、ゴーハム病、リンパ管拡張症)のは多くは小児期までに発症する。頭、顔、胸、脇の下などのリンパ管が液をため込んで袋状に膨らみ、巨大な「こぶ」をつくることもある。
見た目の問題に加え、痛み、内出血、リンパ液の漏れといった症状が表れる。気道を圧迫して呼吸困難を起こしたり、骨を溶かして骨折しやすくなったりすることもある。
ただ、「がんのように急に大きくなることはなく、自然に縮小することもある」(小関医師)ため、発生した部位や大きさによっては治療せずに様子を見ることもある。
治療する場合、小さな病変なら手術で切除するのが確実。そのほか、特殊な薬を注入して病変を縮小させる治療法やステロイド剤、漢方薬の内服なども行われる。しかし、「複数の臓器にある」「正常な組織と入り組んでいる」などの理由で手術が困難な場合があり、従来の内服薬も有効性がはっきりしていなかった。
▽手術より簡便に
近年、リンパ管疾患の発症に細胞増殖の指令を出す「mTOR(エムトール)経路」という機能が関わることが分かってきた。小関医師は、mTOR阻害作用があるシロリムス錠という免疫抑制薬に着目し、他の医師とともに臨床試験で効果を調べた。
すると、内服した11人中7人で、内服前と比べて病変が20%以上縮小し、有効と判定された。主な副作用として口内炎、にきびのような皮膚炎、下痢が見られたが、自然に軽快するなどしたという。重い副作用の肺炎と皮膚感染も回復した。
「内服薬は手術よりも患者の負担が軽いので、まずシロリムスによる治療を検討します」と小関医師。大きな病変では、内服薬によりある程度縮小させた後に手術する方法も考えられるという。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/04/12 05:00)
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