治療・予防

気付きにくい仮面高血圧
~診察時は正常値(済生会広島病院 松本公治院長)~

 病院の診察室や健康診断時に測定する血圧は正常値でも、家庭や職場などで測ると高血圧になる人がいる。血圧は時間帯や体調によって大幅に変化するためで、正常血圧の仮面をつけて隠れている「仮面高血圧」と呼ばれる。

 高血圧の治療に詳しい済生会広島病院の松本公治院長は「仮面高血圧は臓器障害や心血管疾患などを発症しやすいので、注意が必要です」と呼び掛ける。

朝晩の血圧測定のポイント

朝晩の血圧測定のポイント

 ▽危険な高血圧

 血圧は一日の中で大きく変動する。通常は午前中は高く、午後から下がり、就寝中は最も低くなる。血圧が一定以上高い状態が続くと高血圧と診断される。基準値は、家庭で測定する場合135/85mmHg以上、診察室では140/90mmHg以上だ。高血圧の状態が続くと、心臓、脳、大動脈、腎臓などさまざまな臓器に障害が起こりやすくなる。

 海外では、60歳以上の仮面高血圧患者の約30%以上が心血管疾患を発症したと報告されている。松本院長は「通常の高血圧と同等かそれ以上に危険な高血圧です」と指摘する。

 病院で測定した血圧が正常だと安心して、早朝や昼間、夜間などに高血圧になっていても見逃してしまいがちだ。松本院長によると、特に高血圧治療中の人は仮面高血圧になりやすい。同院で高血圧の治療を受けている患者のおよそ3割は仮面高血圧が疑われるという。降圧薬で血圧がコントロールされているにもかかわらず臓器障害が進んでいる場合、一日のどこかの時間帯で高血圧になっている可能性がある。

 ほかに、左室肥大などの臓器障害や心血管疾患がある人、喫煙者、多量飲酒者、ストレスが高い人、糖尿病肥満、メタボの患者なども仮面高血圧の高リスクグループに該当する。

 ▽朝晩の血圧測定を

 仮面高血圧の治療は降圧薬による薬物治療が基本だ。降圧薬の効きが悪く、高血圧の状態が長時間続くような場合は、降圧効果が持続する薬や、作用が異なる降圧薬を混ぜた配合剤などに切り替える。

 仮面高血圧を見つけるには、毎日朝と夜の血圧測定が有効だという。松本院長は「朝は、起床後トイレを済ませて朝食を食べる前に、夜は就寝前に、いずれも安静な状態で測ります。できれば上腕で測る血圧計を使うとより正確な測定が可能です」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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