Dr.純子のメディカルサロン

更年期への過度な不安は禁物
~体調・メンタルに悪影響も~

 最近、テレビや雑誌で更年期に関する報道が多く見られます。これまであまり表立って話し合われる機会がなかった更年期について、正しい知識が普及することは大歓迎です。その一方で、「更年期の症状が出たらどうしよう」と不安になり、ストレスを感じている女性がいるのは問題です。こうした「更年期予期不安」について考えます。

(文 海原純子)

更年期啓発ポスター(日本女性医学学会作成)

更年期啓発ポスター(日本女性医学学会作成)

 ◇症状に個人差

 更年期は閉経の前後5年間を指します。閉経を50歳として45~55歳の10年間が該当しますが、更年期自体は病気ではありません。ただ、この時期は卵巣のホルモンエストロゲンが徐々に減少し、このために脳下垂体からFSHという卵胞刺激ホルモンが多量に分泌され、自律神経のアンバランスによる症状が出やすくなります。体温調節が円滑にいかなくなり、急にのぼせて汗が出たり、逆に冷えたりします。不眠、イライラ、うつ気分、動悸(どうき)、耳鳴り、めまいなども多く見られます。こうした症状がひどくなり、日常生活に支障をきたす場合が更年期障害です。更年期は誰にでも訪れる年齢的な通過点ですが、症状は一律ではなく個人差が大きいことを知ってほしいと思います。日常生活が困難になる人もいれば、ほとんど症状がない人もいます。

 ◇こんなケースも

 テレビで症状が重いケースが報道されるのを見て、症状がないうちから不安を募らせてしまう人がいます。産業医と面談した48歳のAさんは企業の総務で主任をしています。家庭と仕事を両立してきたAさんは最近、業務が忙しくなると集中力が減少して頑張りが利かなくなったと感じているそうです。課長への昇進の話もあるのですが、更年期を理由に昇進を諦める女性が増えているという報道に接すると「自分も症状がひどくなるかも」と思い、気持ちが暗くなるといいます。他に気になる症状はないにもかかわらず、「なったらどうしよう」という不安を拭い切れず、それが体調を悪化させていると思われました。

 40歳のBさんはまだ更年期には早いのですが、母親から更年期はとても大変だったという話を聞かされてきたので、何か症状が起きるとすぐ更年期と結び付けてしまう傾向があります。最近、不安定な気温の変化に適応できず、イライラやめまいを覚えたり、眠りが浅くなったりしていますが、それを「更年期に違いない」と考えて憂鬱(ゆううつ)になっています。母親や身近な女性から更年期の体験を聞いた方の中には、更年期に近い年齢になると自律神経がアンバランスな状態で起きる症状を更年期と結び付けてしまい、気持ちを落ち込ませる要因になることがあります。

 ◇「レッテル貼り」「決めつけ」に注意

 更年期に対する不安があると、何かちょっと体調に問題があるとき、「更年期に違いない」と決めつけてしまう傾向が見られます。季節の変わり目の不安定な気象状況などで体調が変化したとき、それを更年期症状だと捉えてしまうことでさらに体調が悪化したり気分が落ち込んだりという傾向も見られます。また、「自分はもう更年期だから駄目」というように、自分にレッテルを貼って落ち込んでいる女性から相談を受けることもあります。更年期を心配している女性には、血液検査でエストロゲンや脳下垂体のFSHを測定するなどの対応を勧めることもあります。

 ◇必要な検査は受けよう

 更年期は誰にでも来ますが、症状には個人差があります。ですから過剰な不安は禁物で、不安により逆に症状や気分の落ち込みがひどくなるリスクについて知っていただきたいものです。ただ、この時期の女性はエストロゲンの減少により血管障害が起こりやすくなったり、骨密度が減少したり、血中の脂質が上昇しやすくなったりします。必要な検査は受け、過剰な不安に陥らないでほしいと思います。(了)

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