治療・予防

アニサキス症
~寄生虫による食中毒(にしやま消化器内科 西山範院長)~

 魚介類につく寄生虫アニサキスが食中毒を引き起こすアニサキス症。生や加熱、冷凍が不十分な魚介を食べることで起こる。

 「冷凍されていない鮮魚ほど要注意です。釣った魚を自分で調理して食べ、アニサキス症になる人も多いです」と、にしやま消化器内科(大阪市)の西山範院長は話す。

長さ2~3センチ、直径0.5~1ミリほどの細長い糸状のアニサキス

長さ2~3センチ、直径0.5~1ミリほどの細長い糸状のアニサキス

 ◇激しい腹痛

 アニサキスの幼虫は長さ2~3センチ、直径0.5~1ミリほどの大きさで、半透明の白い糸状に見える。生きたアニサキスが口から体内に入り胃や腸の壁に突き刺さると、激しい腹痛などの症状を引き起こす。これはアニサキスが突き刺さったことによる直接的な痛みというより、アニサキスの分泌物に対する体のアレルギー反応によるものであることが分かってきた。嘔吐(おうと)や発熱じんましんなどの症状が同時に出る場合もある。ごくまれに、腸がまひして腸閉塞(へいそく)などの合併症により入院を要するケースも。

 原因となる魚介類はサバやサンマ、カツオ、サケ、イカなどさまざま。「特にサバが多く、食べた数時間後に胃の痛みが出て来院されるケースがほとんどです」

 アニサキスが胃で見つかれば内視鏡で摘出でき、ほとんどの場合はじきに症状が治まる。「胃より先の小腸に入ると摘出は難しく、腹痛などの症状を薬で抑えながらアニサキスが死滅するのを待ちます。アニサキスは人体内では長く生きられず、数日から1週間ほどで死滅します。内視鏡で除去できなくても、2~3日で症状が治まることが多いです」

 ◇十分に加熱や冷凍を

 アニサキスは魚介類の体内では主に内臓に寄生しているが、魚介類が死んで時間が経過すると、筋肉に移動することが知られている。60度以上で1分以上の加熱、マイナス20度以下で24時間以上の冷凍により死滅する。釣った魚や購入した鮮魚を生で食べる場合は、冷凍処理をすることが重要だ。

 「酢で締めてもアニサキス症の予防には役立ちませんし、内臓や皮を取ってもアニサキスを取り除けるとは限りません。また、同じ魚を食べても全員に症状が出るとは限りません。気になる症状があれば、すぐに消化器科を受診してほしい」と西山院長はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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