成長や学力に影響も
~小児期に多い回避・制限性食物摂取症(国際医療福祉大学成田病院 中里道子教授)~
小食や偏食で子どもの体重が増えない―。そうした背景に、回避・制限性食物摂取症が潜んでいる可能性がある。栄養不足で成長が妨げられたり、健康や生活機能に影響が及んだりする例もあるので注意が必要だ。
国際医療福祉大学成田病院(千葉県成田市)精神科の中里道子教授は「早期診断と適切な治療を受けることが大切です」と話す。
栄養不足や成長不良に陥る
◇痩せ願望はない
回避・制限性食物摂取症は、食べ控えたり特定の種類の食べ物を避けたりすることで成長不良、栄養不足に陥る病気で、小児期の発症が多い。
低体重や、太るのが怖い肥満恐怖を特徴とする「神経性痩せ症(いわゆる拒食症)」や、食べ出すと止まらない「神経性過食症」などと同じ「食行動症および摂食症群」に分類されるが、これらとは異なる病気だ。神経性痩せ症、神経性過食症は女児に多いが、回避・制限性食物摂取症は男児でも見られる。
この病気には▽食べることに関心がないタイプ▽匂いや食感が苦手で食べられない感覚過敏タイプ▽給食の時間に気分が悪くなったり嘔吐(おうと)したりして恥ずかしい思いをしたなどの嫌悪すべき結果に対する不安から生じるタイプ―などがある。自閉スペクトラム症などの神経発達症の子どもの併発例も多いという。
「神経性痩せ症に見られる体重増加への恐怖感や痩せ願望がない場合は、回避・制限性食物摂取症の可能性があります」(中里教授)
◇認知行動療法や家族療法
小児期に発症すると、十分な栄養が取れず成長が妨げられる他、集中力が落ちて学力低下を招きやすくなる。女児の場合は無月経になり、成人後に骨粗しょう症などを発症する恐れもある。
治療法はまだ確立されていないが、食べ物に対する考え方と行動を捉えなおす認知行動療法や、患者を含めた家族を対象にした心理療法(家族療法)が推奨される。特に食後に起きることに不安を感じているタイプに対する認知行動療法では、苦手な食べ物に少しずつ慣れて不安を取り除く方法も効果が期待できるという。
「気になる症状がある場合は、子どもを責めたり無理に食べさせたりせず、小児科、内科、精神科、心療内科などへの受診をお勧めします」と中里教授は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/04/26 05:00)
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