老眼、40歳ごろから
~早めの眼鏡使用を(二本松眼科病院 平松類副院長)~
加齢とともに誰もが経験する老眼。40歳ごろに、読書などで30センチ程度離れた手元が見づらくなる人が多い。「老眼に気付いたら放置せず、眼鏡などで対処することにより眼精疲労の予防にもなります。眼精疲労は目の疲れだけでなく、頭痛、肩凝り、吐き気、いらいらなどの全身症状を伴います」と二本松眼科病院(東京都江戸川区)の平松類副院長は話す。
眼鏡などで早めのケアを
◇進行は70歳ごろまで
老眼は10歳代後半ぐらいから始まっており、目のピントの合う距離が徐々に長くなっていくのだが、生活に影響しないため気付きにくい。本や新聞が読みづらくなって自覚し、おおむね70歳ごろに進行が止まるのが平均的な変化だ。
気を付けたいのは、白内障や緑内障を老眼と勘違いするケース。「病気の放置につながり、治療が遅れて失明に至る例もあります」。こうした事態を避けるためにも、視力の低下を感じたら眼科の受診が肝心だ。病気のチェックと同時に、眼鏡用の処方箋も作ってもらうとよい。
「眼鏡を使うと老眼が進むと思っている人がいますが、むしろ早めの遠近両用眼鏡の使用を勧めます。目のピント調節機能を休ませられるため、目が疲れづらくなり、老眼の進行を遅らせる可能性もあります」
使用開始が遅くなると眼鏡のレンズに設定する遠近の度数差が開き、頭痛や歩行時の不安感を生じやすい。対処法は〔1〕必要な度数より低い度数から徐々に慣らしていく〔2〕大きめの眼鏡フレームを使う〔3〕遠用眼鏡と近用眼鏡を使い分ける〔4〕遠近両用のコンタクトを試す―などだ。
◇目を休める
眼鏡以外でできる対応としては、白内障を併発している場合、保険適用外だが、白内障手術で眼球に入れるレンズを遠近両用にする方法もある。「約8割の人は眼鏡無しで遠くから近くまで見えるようになります」。また輪郭のぼけた「ガボール・パッチ」と呼ばれるしま模様を見て、目から入った画像情報を脳で処理する能力を高めるトレーニングを続けた結果、視力が改善した例もあるという。
他に日常的にできることは、手元を見るような作業を続けると目の筋肉が疲労してピント調節能力が落ちるため、時々休むなど。遠くと近くを交互に見る目の運動や、眼精疲労用の点眼液も目の筋肉をほぐすのに役立つ。紫外線にも要注意だ。目のレンズである水晶体は、紫外線を浴びると硬くなりやすく、動きが悪くなる。
「老眼は早めの対処と、日ごろのケアが大切です。眼鏡は2年に1度程度、視力に合っているかをチェックするといいでしょう」と平松副院長はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/04/30 05:00)
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