治療・予防

痩せた若年女性もリスク
~糖尿病予備軍(順天堂大学大学院 田村好史教授)~

 肥満糖尿病リスクの一つとされてきたが、近年、痩せていても同様のリスクがあることが明らかになってきた。順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学/スポーツ医学・スポートロジー(東京都文京区)の田村好史教授の研究グループによると、痩せ形の若年女性では食後に血糖値が上昇する「耐糖能異常」の割合が高く、糖尿病予備軍として注意が必要であると示された。

耐糖能異常の割合

耐糖能異常の割合

 ◇耐糖能異常は約7倍

 田村教授の研究グループは、18~29歳の痩せ形(体格指数=BMI=18.5未満)の女性98人と、標準体重(同18.5~23.0)の女性56人を対象に、ブドウ糖摂取後の血糖値の状態を見る糖負荷試験を行った。

 その結果、2時間後の血糖値が1デシリットル当たり140ミリグラム以上となる耐糖能異常の割合が、標準体重では1.8%だったのに対し、痩せ形では13.3%を占め、約7倍高かった。

 「もともと日本は先進国の中でも痩せた若年女性の割合が約20%と高いことが分かっていましたが、今回、このような耐糖能異常の女性ではエネルギー摂取量や運動量が少なく、骨格筋量も少ない点が明らかになりました」

 また、耐糖能異常の痩せ形若年女性では、肥満に伴い出現すると考えられてきたインスリン抵抗性を来していることも分かった。膵臓(すいぞう)から分泌され血糖値を下げる働きを持つインスリンというホルモンが効きにくい状態で、肥満糖尿病予備軍のようなデータだったという。

 ◇「痩せ願望」に警鐘

 エネルギー摂取量や運動量が低く、筋肉量が少ない若年女性について、田村教授は「エネルギー低回転タイプ」と呼ぶ。「十分なエネルギー量の摂取、適度な運動、良質な睡眠の確保によってエネルギー高回転タイプを目指し、耐糖能異常を改善させることが重要と考えています」

 BMIだけで耐糖能異常と決め付けられないが、「年1回の健康診断を受け、空腹時血糖や、過去1~2カ月分の血糖値を反映したHbA1Cの値が正常範囲内だったとしても安心せず、前年や前々年などと比べ少しでも上がっているようなら生活習慣を見直してみましょう」。

 田村教授は産官学でつくる「マイウェルボディ協議会」の代表幹事を務め、各自が心身の健康を維持できるよう、啓発活動やSNSでの発信などを行っている。特に若年女性の安易な痩せ願望に警鐘を鳴らし、「メディアなどを通じて痩せたい気持ちをつくり出してしまう社会にも問題があると思います」と訴えている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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