痩せ過ぎの健康リスク
~シンデレラ体重(藤田医科大学 飯塚勝美教授)~
「シンデレラ体重」などと称される若年女性の極度の痩せ形には、大きな健康リスクが潜んでいる。藤田医科大学(愛知県豊明市)臨床栄養学講座の飯塚勝美教授は「ファッションモデルのような低体重の若年女性は栄養不良に陥りやすく、将来的な健康リスクが懸念されます」と話している。

BMIと低体重、肥満の関係
◇不妊や骨粗しょう症
飯塚教授らは、同大学の20~39歳の女性教職員で、低体重の中でも極端に痩せた体格指数(BMI)が17.5未満の44人を対象に栄養評価を行った。その結果、握力が弱く、総コレステロールやリンパ球の低下が見られ、栄養状態が悪いことが分かった。
総コレステロールやリンパ球の値が低いと、免疫機能の低下につながるとされる。握力の低下は、高齢になると総死亡率や循環器病による死亡率などの上昇と関連することが報告されている。
さらに、ビタミンDやビタミンB12、葉酸などの血中濃度の低下も見られた。「将来的な骨折、骨粗しょう症、不妊や低体重児出産リスクなどにつながる可能性があります。低体重児は将来的に高血圧や糖尿病リスクも懸念されます」。食事内容の評価では、これらの女性の約9割は炭水化物、食物繊維、タンパク質、鉄分、カルシウムの摂取量が不足していた。
こうした結果を受け、飯塚教授らは同大学の教職員を対象に10月から料理教室を開始。「普段の食事で足りていない栄養素を摂取する意味も伝えています。今後、企業に勤める人向けにも開催したい」
◇体重測定や便の確認を
ひと口に低体重や低栄養といっても原因はさまざま。ダイエット目的での食事制限に限らず、味覚障害があったり、口内炎などで食事が取りづらかったり、便秘や下痢で食欲が落ちたりしていることもある。「低栄養や低体重の原因となる病気が隠れていないか、血液検査で調べてもらうのもよいでしょう。甲状腺機能亢進(こうしん)症、副腎不全、消化管のがんが見つかる場合もあります」
加えて、体重や食事量の変化、下痢や便秘の有無の確認も重要という。体重は起床直後や就寝前など決まった時間に測り、「半年間で5%程度の減少が見られたら、一度は医療機関の受診を。便秘や下痢が続くようなら腸管の検査を受けるのもよいでしょう」。
「肥満と同じく、極度の低体重には健康リスクが伴います。病気にかかりやすくなり、回復のための力(予備能)が低下してしまいます。生活習慣全般を見直しましょう」と飯塚教授は呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/02/10 05:00)
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