「緩やかな糖質制限」で
~糖尿病予防(北里大学北里研究所病院 山田悟・糖尿病センター長)~
糖尿病の食事療法は「食べたい物を我慢する」といったイメージがある。ただし近年は、ある程度糖質を制限すれば食べていけない物はないという「緩やかな糖質制限」が広まっている。2009年から患者用に糖質制限食を導入している、北里大学北里研究所病院(東京都港区)糖尿病センター長の山田悟医師に理由や効果について話を聞いた。

三大栄養素
◇カロリー制限食から糖質制限食へ
糖質とは炭水化物の一部で、たんぱく質、脂質と並ぶ三大栄養素の一つ。かつて糖尿病の食事療法といえば、カロリー制限食が一般的だった。「私が糖質制限に着目したのは、08年に『糖質制限食は体重減に効果的』という海外の論文を目にしたことです」
同研究では〔1〕脂質・カロリー制限〔2〕脂質の積極的摂取+カロリー制限〔3〕糖質制限+カロリー・脂質・たんぱく質は無制限―に分け、体重の減少を比較。その結果、〔3〕が最も効果的な減量法で、血糖管理にも最善であることが分かった。
「たんぱく質と脂質を取ると、消化管ホルモン『インクレチン』が分泌され、満腹感が得られ血糖上昇を抑制できる。同時に、空腹を感じさせるホルモン『グレリン』の分泌を抑える作用もあり、満腹感が持続する。一方、糖質だけ摂取すると、グレリンを抑える作用が弱いため、おなかがいっぱいでもすぐに小腹が空いてしまいます」
◇ダイエットにも効果的
緩やかな糖質制限として、1食当たりの糖質量は20~40グラム×3食、間食は1日同10グラムで、1日の総摂取量は70~130グラムが推奨される。この範囲であれば、何を食べてもよい。
糖質が多い白米を減らすことに苦労する場合について、「料理の塩味が濃過ぎる可能性が大きい。塩分を減らし、ゴマ油やマヨネーズなどで味を付けるといいでしょう」と山田医師。
また脂質は、動脈硬化や脳卒中などの心血管疾患を引き起こすとされてきたが、脂質を制限しても動脈硬化の予防にならず、脂質を制限すると心血管疾患既往者では再発しやすく、死亡率も上がったとの研究結果もある。
今は、パンやチョコレートを含め、糖質制限食の種類も多く、提供する飲食店も増えつつある。「糖質制限食は、糖尿病だけでなく、中高年のメタボ予防やダイエットにも効果的です。肥満の人は約1週間で減量効果を感じられるでしょう」(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/02/20 05:00)
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