歯失うと孤独感高まる
~会話や食事楽しむ機会減る(東京科学大学大学院 松山祐輔准教授)~
自分の歯が一本もなくなると、孤独感が高まる―。東京科学大学(旧・東京医科歯科大)大学院医歯学総合研究科(東京都文京区)の松山祐輔准教授は、長期観察データを分析し、口の健康と孤独感の因果関係を明らかにした。

孤独感スコアの変化
◇約1割、歯がない
松山准教授は、2006~15年の同調査に2回以上続けて参加した英国の50歳以上の7298人を調べた。自分の歯が全くない無歯顎(むしがく、入れ歯やインプラントの有無は問わない)の人の割合は、10.6~12.8%だった。
追跡期間中に全ての歯を失った人は「他人から孤立していると感じる頻度」など3項目で測定した孤独感スコア(3~9点で高い方が強い)が0.31点増加した。年齢や世帯年収、就労や婚姻状況などの要素を考慮しても無歯顎との関連は明らかだった。
◇社会的交流に重要
孤独感が強まった背景について、松山准教授は「歯は人と話す、笑う、一緒に食事をするなど、社会的交流に重要な役割を果たしています。自分の歯がなくなることで、人との交流が減ったためではないか」とみる。
今回、口の健康を維持して歯の喪失を予防することで、孤独のリスクが軽減される可能性が示唆された。歯を失った人が入れ歯やインプラントを使用すると孤独感が和らぐかどうかは、今後の検討課題という。
「高齢者にとっては、無歯顎による孤独がうつなどにつながる恐れがあります。歯を失わないためには、歯科医院での定期健診、自宅でのセルフケアを続けましょう。禁煙も必要です」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/02/19 05:00)
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