Dr.純子のメディカルサロン

肺がんと闘う 患者NPO代表 長谷川一男さん

 海原 肺がんと聞くとたばこというイメージがあります。長谷川さんはたばこを吸わないのに肺がんに罹患(りかん)。自業自得というイメージで見られて嫌な思いをしたことがあるのではないでしょうか。

 長谷川 そうですね。肺がん患者の方はほぼ経験していると思いますが、病気のことを打ち明けると、必ずと言っていいほど、聞かれることがあります。悪気があっての質問ではないことは分かります。気遣って心配してくれるのも分かります。でもこう聞かれるととても傷つきます。

 「たばこ吸っていたの?」

 肺がんになるのはたばこを吸っていた人、というイメージがあると思います。これを肺がんの「スティグマ」と言います。スティグマとは「負の烙印(らくいん)」という意味で、簡単に言えば、偏見や差別のことです。確かに喫煙が原因とされる肺がんもありますが、遺伝子の変異や原因が分からないタイプの肺がんもあります。

 なので、非喫煙者がこの質問をされると「たばこを吸っていないのに」と腹立たしく、悲しくなります。喫煙者だった場合はもっと深刻です。たばこを吸っていたことを誰よりも後悔しているのに、親しい人にまで自業自得と責められ、冷たく突き放されたようで、孤独感にさいなまれます。

 たばこを吸っていなくても肺がんになることがあります。心が痛むので「たばこを吸っていたの?」という質問はしないでほしいです。苦痛や恐怖に立ち向かい闘病を続けている私たちのことを思ってくださるのであれば、知ってほしいことです。



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