CDIメディカル医療インサイト

(第9回)地域医療支援病院に求められる変革
機能分化から働き方改革まで

 ◇ネットワーク強化の具体策

 --医療ネットワークの強化は、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか。

 平岡院長 医療連携総合支援センターを中心に、各診療科から情報を収集し、地域の医療機関との連携を強化しています。平成12年に当院は「ネットワーク会員制度」を設けました。現在、登録医は672名となり、当院主催の交流会に加え、各診療科で地域医療機関と勉強会などを開催しています。

 昨年秋からは、オンライン画像検査予約を開始しました。365日24時間、連携登録会員はご自分の診療デスクから各検査を予約できます。検査日当日にインターネットを介して、当院の放射線診断専門医による読影結果が報告されます。先端的な画像診断機器をそろえ、専門医が在籍する当院の地域で担うべき役割であると思っています。

ドクターカー
 救急の受け入れも重要です。私の着任時は、受け入れは多いものの体制は脆弱(ぜいじゃく)でした。救急医を増やし、安心して救急を受けられる体制を整備しました。さらに当院の高度救命救急センターに消防隊員の常駐が実現し、ドクターカーの運用を開始しました。

 現地で医師の処置や判断が必要な場合、医師がドクターカーに乗り現場までいきます。より重症な患者への対応がより迅速かつ的確に行えるようになり、地域の信頼も高まったと思います。また、救急医の先生方の熱心な指導により、救急に関心を持つ研修医も増えました。結果的に、救急患者の受け入れ件数は増加し、経営改善にもつながっていると思います。

 ◇「全例応需」を継続

 --和歌山医療センターでは、医師の当直制を廃止して、交代勤務制に変更されました。全国でも珍しいケースだと思いますが、これも経営改善施策の一貫なのでしょうか。

 平岡院長 経営強化策が軌道に乗り、ホッとしていた昨年秋に、労働基準監督署から医師の勤務に関する是正勧告がありました。36協定で定めた時間を超えて時間外勤務を行っていた医師への対応に加え、現在の当直業務は当直の範囲を超えており、勤務として対応すべしとの指導です。

日本赤十字社和歌山医療センターへのドクターカーによるER搬入
 時間外勤務時間は現状でも許容できないレベルに達している中で、当直を勤務にするとさらに増えてしまします。当院に解決の処方箋があるのか悩みました。救急医療を縮小するしかないとの意見もありました。

 和歌山で救急のたらい回しが問題となっていない理由の一つに「全例応需」をモットーにしてきた当院の頑張りがあり、病院を挙げて救急医療を支えてきたという文化は今も健在です。眼科当直の継続は難しく撤退しましたが、それ以外の当直は勤務に変更し、救急体制は継続することにしました。

 ◇複数主治医制

 その一方で、働き方改革法案が成立し、勤務時間の上限順守が法令として規定されました。医師は労働者であり、守らなければ罰せられることになりました。

 厚労省から出された「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」を院内の一つの診療科で試行したところ大きな支障を来さなかったことから、診療科全体へ広げる施策を決めました。患者説明は原則時間内に行う。スキルアップは病院外のセミナー等を推奨。当番医を含め複数主治医制を設け、平日準夜・深夜帯あるいは土日には、主治医はかけつけなくても担当医で対応する方式を進めることにしました。

 しかし、これまでの慣習があり、当然なことですが、患者からの信頼関係が喪失しては良い医療は行えません。医師のモチベーションと患者の安全の双方を保ちながら進めることが重要で定着に時間がかかると思います。

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