(第9回)地域医療支援病院に求められる変革
機能分化から働き方改革まで
--医師も新しい働き方の受け入れには葛藤があると思いますが、その点はどのように納得させているのですか。
「医師の業務とは何か」。この時代に合ったコンセンサスが必要と思います。特に私たちのシニア世代では、「医師はこうあるべし」という思いが強いですが、若い世代では異なった働き方意識を持っているように思えます。彼らは、長時間病院で拘束されないで、完全にフリーの日を望む傾向があります。そういう意味では、シニアと若い世代との意識もマッチングが必要ではないでしょうか。
働き方改革は、今までの医師文化を大きく変革させる大きなポテンショルを持っています。さらに医師の業務を多職種が引き継ぐタスク・シフティングの導入などが今後進むでしょうし、日本の医療そのものが変わっていくと思います。働き方改革は平成の最後に起こった黒船到来かもしれません。
◇医療を地域で完結
--今後、地域単位で医療提供体制の整備が求められています。その中で重点となるのが「医療機能の分化と連携」です。今後、和歌山医療センターはどのような機能を担っていくのでしょうか。
これらの疾患に対して、診療科あるいは職種の垣根を越えて患者を中心にした医療を行うチーム医療を実体化させることも重要でしょう。がん領域では、患者や家族の身体やこころのさまざまな苦痛をやわらげ、より豊かな人生を送ることができるように支えていく緩和ケア病棟を10月より開設し、がん医療の強化を図ります。
後期高齢者に合った医療の提供も重要です。後期高齢者が急増していますが、後期高齢者に適した急性期医療とは何か、かなり曖昧な状況で医療を行っている現状があります。超高齢化社会の先進県である和歌山において今後強化すべき領域と思います。
--今後の地域医療、医師の働き方をはじめ医療提供体制がどのように変わっていくのか非常に関心が高まります。本日はありがとうございました。
平岡院長 ありがとうございました。
◆重要さ増す経営戦略
高齢化の進展、医療費抑制に向けた政策誘導、働き方改革にともなう勤務時間の規制。病院経営現場は非常に難解な課題が山積しています。地域医療の質を保つには、従来の仕組みに沿った改善施策の展開ではなく、仕組みや慣習そのものを見直した変革が必要となっています。そのためには、病院経営そのものについても、各病院単位から、地域の多病院が連携・協働していく、他病院とともに経営戦略を検討していくことも、より一層重要になるのではないでしょうか。(CDIメディカル・谷明日美)
株式会社CDIメディカルは、国内初の独立系経営戦略コンサルティングファームであるコーポレイトディレクションが設立した、メディカル・ヘルスケアに特化した経営戦略コンサルティングファームです。業界に関する専門的知見と、国内外医療関係者との密接なリレーションシップを基盤として、企業や医療機関の経営課題を解決すべく、さまざまなサービスを提供しています。◇本社所在地 東京都品川区東品川2―2―4 天王洲ファーストタワー23階 電話03(5783)4130
平岡 眞寛(ひらおか・まさひろ)
日本赤十字社和歌山医療センター院長。1977年京都大学医学部卒。1995年京都大学大学院腫瘍放射線科学(現:放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任。京都大学初代がんセンター長を経て、2016年より現職。日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを歴任したがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発。
谷 明日美(たに・あすみ)
株式会社CDIメディカル副査。慶応義塾大学総合政策学部卒、同大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了(政策・メディア修士)。株式会社メディカルクリエイト、株式会社エス・エム・エス/株式会社エス・エム・エス キャリアを経て、現在に至る
(2018/10/06 16:00)