CDIメディカル医療インサイト

(第12回)高齢者に食事指導をする重要性
低栄養が要介護に至らないために

 最近、高齢者の介護や医療において「フレイル」「サルコペニア用語説明は次ページ最下段にといった言葉を耳にするようになりました。それぞれ定義はありますが、これらは共通して加齢による機能低下に関連する容態です。運動機能や認知機能が低下し、脆弱(ぜいじゃく)、機能不全となった状態を指します。進行すると要介護になる可能性がありますが、早期の予防や適切な介入により、機能の維持・向上につながる可能性があります。

食事指導は大事です

食事指導は大事です

 機能低下に陥る要因の一つには、「低栄養」があると言われています。高齢者の食が細くなったことを「年のせいだから当然…」などと見過ごしてしまうと、体力・筋力が落ち、機能低下が進み、要介護へと進んでしまいます。介護予防や疾病の重症化予防には、日々の栄養管理、食事への配慮が非常に重要となっています。

 ◇高齢者には栄養管理が必要

 医療・介護領域からみた栄養管理の重要性は、診療報酬の評価からも読み取ることができます。医療機関において管理栄養士が献立などの指導を行う「栄養食事指導料」をはじめ、以前から管理栄養士が介入することを評価する点数があります。それらに加えて、2018年度診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟で最も高い点数である入院料1の算定要件に「栄養管理の充実」が含まれました。

図1

図1

 回復期リハビリテーション病棟は、脳卒中や大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)骨折の患者さんに集中的にリハビリを行い、回復した状態で自宅等への復帰を目指す病棟です。日常生活動作(ADL)の改善にはリハビリに加え、栄養面からのアプローチも重要であるという判断に基づく改定であると認識しています。

 医療機関内における栄養指導だけではありません。通院が困難な患者に対して、自宅に管理栄養士が訪問して指導を行う、医療保険適用の「在宅患者訪問栄養食事指導」、介護保険適用の「居宅療養管理指導」などもあります。高齢者にとって栄養管理が非常に重要であることはすでに書いた通りです。病院や施設と異なり、家族や高齢者ご自身が食事を用意する在宅では、より一層、専門家である管理栄養士の介入が重要となってきます。

図2

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 ◇数が少ない管理栄養士

 しかし、在宅での栄養食事指導はなかなか実施されていない実態があります(図1、図2)。この要因の一つには、保険内で実施するためには、保険医療機関(病院・診療所)、もしくは指定居宅療養管理指導事業所(介護保険の指定を受けた病院・診療所)の管理栄養士が実施しなければならないという要件が設定されていることにあると推察しています。

 医療機関に勤める管理栄養士は、他の職種に比べて数が少なく、病院と一般診療所合わせて常勤換算で約2万6000人です(表1)。高齢者が増える中で、在宅での栄養食事指導を担える人たちとしては非常に少ない人数です。これらの管理栄養士は、患者さんへの栄養食事指導のみならず、チーム医療として行う栄養サポート(NST)や、その他の院内業務も担っています。院内業務に加えて、地域に出て指導を行うのは、非常に難しい現実があるのではないでしょうか。


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