「患者のプロ」からのメッセージ
がん手術6回、定年まで現役
◇個人・家族の問題ではない
関原氏の闘病が特集されたNHKスペシャル「働き盛りのがん」(2009年放送)の中では、「がんを自分ごととして、社会全体として捉えていくことの重要性」に言及されています。高齢化や核家族化が進み、家族のサポート体制が脆弱化する中で、がんは2人に1人がかかって、3人に1人はがんで亡くなるという事実を認識し、家族の問題でも個人の問題でもなく、社会全体で受け止めてサポートしていかないとこの国の明るい将来はない。健康な時にこそ、がんの問題を考えて社会全体で取り組んでいかなくてはいけない、と指摘しています。
国としてのがん対策は「がん対策基本法」に基づき、がん対策基本計画が策定され、予防啓発から医療体制の充実、がん患者の社会的支援と網羅的に取り組みがされています。しかしながら、その具体的な内容については、一般の方の理解はあまり進んでおらず、がんと宣告されて初めて、その施策の存在について知り、考える現状にあるのではないでしょうか。それを示すかのように、「がん検診」については、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」に基づき、全国の自治体でほぼ100%実施されているにもかかわらず、受診率は50%未満という数値になっています(図参照)。
がん患者が生きがいをもち立ち向かうための環境づくりには、仕組みや体制の整備ももちろん重要ですが、それだけでは実現しません。がん患者だけではなくそれ以外の各人もがんについて考え、サポートできるよう、広く理解を深めていく必要があるのではないでしょうか。
医療業界は、医療機関とそこで働く医療従事者だけではなく、製薬業や医療機器業をはじめとするさまざまな企業体、医療技術・質の向上に取り組む学会等の業界団体など複数の業態によって成り立っています。医療の中心にあるべきは患者ですが、その病については患者や医療関係者だけではなく、健康な人を含めた社会全体の理解が重要となっています。病、そしてそれに立ち向かっている人々に対する社会の理解をスムーズに行うための環境をつくることも、「患者のプロ」から医療業界に身をおく我々に対して求められた務めなのかもしれません。(CDIメディカル・谷明日美)
〔株式会社CDIメディカル〕
国内初の独立系経営戦略コンサルティングファームであるコーポレイトディレクションが設立した、メディカル・ヘルスケアに特化した経営戦略コンサルティングファームです。業界に関する専門的知見と、国内外医療関係者との密接なリレーションシップを基盤として、企業や医療機関の経営課題を解決すべく、さまざまなサービスを提供しています。◇本社所在地 東京都品川区東品川2―2―4 天王洲ファーストタワー23階 電話03(5783)4130
〔谷 明日美(たに・あすみ)〕
株式会社CDIメディカル主査。慶応義塾大学総合政策学部卒、同大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了(政策・メディア修士)。株式会社メディカルクリエイト、株式会社エス・エム・エス/株式会社エス・エム・エス キャリアを経て、現在に至る
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(2019/02/05 06:00)