女性アスリート健康支援委員会 宮嶋泰子、女性アスリートを大いに語る

体操のチュソビチナは46歳で五輪出場 
~「日本は枠にはまり過ぎ」~ ―女性トップ選手の苦心・奮闘を密着取材 宮嶋泰子氏―(4)

 ◇スポーツ女子アナの草分け的存在ながら、女性ゆえに多くの苦心も

女子マラソンを女性アナウンサーとして初めて実況した思い出を語る宮嶋さん

女子マラソンを女性アナウンサーとして初めて実況した思い出を語る宮嶋さん

 ―宮嶋さんがテレビ朝日に入社されたころは、女性アナウンサーが少ない時代でした。局内で女性だからということで憤ったことはありますか。

 「そういうことは忘れるようにしていました。『バカヤロー』じゃないですが、そういうことを一つひとつ気にしていたら前に進めないので、全部忘れるようにしました。でも同じアナウンス部の中にいても、例えば、最初にリポーターとして現場に出て『●●選手がウオーミングアップを始めました。この後30分後にレースに向かいます』というようなひと言にしても『女の声は高い』とか『うるさい』とか言われます。同じアナウンス部の中ですよ。初めてシンクロの実況を終えた後の部会で、私が『ワクワクするようなこと、次は何を言おうかとか、こんな風に自分で紹介できる喜びはなかったです。本当におもしろかったし、楽しかったです』と言ったら、『おれたちがつくり上げてきた歴史を、お前は何だと思っているんだ』と言われました」

 ―宮嶋さんはアトランタ五輪で、女子マラソンを女性アナウンサーとして初めて実況されました。その時はいろいろと言われましたか。

 「すごかったです。でも今年、放送レポートという冊子がありまして、その中で東海大のメディア研究の先生方がゼミで調査をしてくださり、当時の中継を学生に聴かせて学生にリポートを提出させたのですが、『問題なく、素直に聴けた』という声を紹介してくれました。あの時の実況を改めて聴くと、ウタ・ピッピヒ選手が東ドイツから亡命して、このレースに賭けているとか、一人ひとりの女性選手のストーリーみたいなことや、自分の伝えたいことを言っているなと思いました。ただ、女性アナウンサーの実況中継を聴くことに違和感を覚えた人が、当時はたくさんいらしたんでしょうね」

 ―取材現場でも、「女性だから」「女性リポーターだから」ということで嫌な経験をされたことはありましたか。

 「得したことはありますよ。ただ、嫌なこともいっぱいありました。男の方が取材している中で、背が低い私は、それをかき分けて取材してました」(了)

 宮嶋泰子(みやじま・やすこ) テレビ朝日にアナウンサーとして入社後、スポーツキャスターを務め、スポーツ中継の実況やリポート、ニュースステーションや報道ステーションのスポーツディレクター兼リポーターとして活躍。 1980年のモスクワ大会から平昌大会まで五輪での現地取材は19回に上る。2016年に日本オリンピック委員会(JOC)の「女性スポーツ賞」を受賞。文部科学省中央教育審議会スポーツ青少年分科会委員や日本スポーツ協会総合型地域スポーツクラブ育成委員会委員、JOC広報部会副部会長など多くの役職を歴任。20年1月にテレビ朝日を退社、一般社団法人カルティベータ代表理事となる。

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