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月経前症候群って何?
~ストレスフルな日常を乗り越える方法~ 【第1回】
月経前症候群(PMS)とは、月経(生理)前に現れる精神的または身体的な不調を指します。3~10日前にさまざまな症状が見られ、月経が始まると症状は軽減するか消失します 。個人差が大きく、症状の強さや種類も個人によって大きく異なりますが、多くの人々の日常生活に影響を与えることは確かです。PMSはなぜ起こるのか、PMSによるストレスフルな日常をどう乗り越えていけばいいのかを一緒に考えていきましょう。
中等症以上のPMS人口は180万人と言われている(イメージ画像)
◇イライラ、無気力、腹痛…心身が不調に
PMSがもたらす心の症状は非常に多岐にわたります。イライラ感や不安定感、集中力の低下が代表例です。無気力や鬱(うつ)のような感情、ボーッとする感覚、寝付きの悪さも一般的な症状として知られています。これらはホルモンの変動だけでなく、個人のストレス耐性や心の健康状態にも影響されます。
身体的な症状としては、腹痛や下腹部痛、胸の張りがよく知られています。体重の増加、アルコールへの耐性の低下、眠気やだるさ、むくみに悩まされる方も多いです。肌荒れやニキビが悪化する場合もありますが、これらは全ての人に当てはまるわけではなく、個人差があります。
ストレスはPMSの症状を悪化させることがあります。ホルモンバランスに影響を及ぼすためで、特に仕事や人間関係のストレスがあると、イライラや落ち込みを強く感じさせるケースがあります。このため、ストレスのマネジメントが対処法として重要になります。
◇心掛けたいリラックス・休息
PMSの期間中は、普段以上にリラックスと休息を意識しましょう。PMSによるストレスフルな日常を乗り越えるためには次のような方法があります。
① 趣味
ストレスを解消するためには、自分なりのストレス発散の仕方を見つけることが何より大切です。スポーツ、読書、音楽、手芸、ガーデニングなど、没頭できる趣味を持つとよいでしょう。自分の興味・関心に合わせて、ストレス発散につながる取り組みを見つけてください。
② アロマセラピー
アロマセラピーは、リラックスを促す手段として有用とされています。効果には個人差があるものの、ラベンダーやカモミールの精油は、イライラや不安感を和らげる効果が期待できます。ただし、使用する際には肌への影響を考慮してください。
③ ハーブティー
ハーブティーのリラックス効果は、PMS対策に役立つ可能性があります。カモミールやペパーミントなど、好みのハーブティーを選んでみてください。カフェインが含まれていないため、就寝前に飲むのもお勧めです。
④ 半身浴
温かい半身浴は血行を良くし、むくみを解消するのに役立ちます。リラックス効果を高めるために、入浴剤やアロマオイルを加えるのもよいでしょう。
⑤ 十分な睡眠
睡眠はPMSの症状緩和に非常に重要です。質の高い睡眠を得るために、就寝前にはリラックスできる環境を整えましょう。
◇自分に合ったセルフケアを
PMSの症状は人によって異なるため、自分に合ったセルフケア方法を見つけることが重要です。リラックスできる時間をつくったり、アロマやハーブを活用したりするだけでなく、食生活やライフスタイルの見直しも有効となります。
症状が強い場合は、医師と相談して適切な治療を検討してください。自分に合う方法を見つけることで、PMSとの付き合い方が見えてくるはずです。(了)
沢岻美奈子(たくし・みなこ)
琉球大学医学部を卒業後、産婦人科医として25年以上の経歴を持つ。2013年1月、神戸市に女性スタッフだけで乳がん検診を行う沢岻美奈子女性医療クリニックを開院。院長として、乳がんにとどまらず、女性特有の病気の早期発見のための検診を数多く手掛ける。女性のヘルスリテラシー向上に向け、診察室での患者とのやりとりや女性医療の正しい知識をインスタグラムで毎週配信している。
日本産科婦人科学会専門医、女性医学学会認定医、マンモグラフィー読影認定医、乳腺超音波認定医、オーソモレキュラー認定医。漢方茶マイスター。
(2024/04/24 05:00)
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