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胃がん健診、バリウムはもう古い? 【第1回】

 ◇細いスコープと鎮静薬で苦痛軽減

 胃内視鏡検査のデメリットは経鼻内視鏡と鎮静薬の使用によって解消されつつあります。

 検査に使われるスコープには、口から挿入する経口内視鏡と鼻から挿入する経鼻内視鏡が存在し、後者の直径は5~6ミリと前者の約半分。検査中の痛みは内視鏡が挿入される際の喉や舌への刺激の強さによって引き起こされると考えられており、細い経鼻内視鏡は一般的に刺激が少なく、苦痛も少ないと言えます。口呼吸や会話も可能で、呼吸機能に問題がある人や医師と会話をしながら検査に臨みたい人にも適しています。

  経鼻内視鏡はカメラが小さいため、画質や解像度、操作のしやすさで劣り、かつては胃がんなどの発見率が低くなる可能性が指摘されていました。しかし、最近は解像度が格段に向上し、経口内視鏡と同様の画質が得られる製品も販売されています。カメラと共に用いられる処置具も小型化への対応が進んでおり、経口内視鏡と同じ程度の検査体制が整いつつあると言えるでしょう。

  ただし、鼻を手術した人や花粉症などのアレルギー性鼻炎がある人、鼻中隔湾曲症と呼ばれる鼻の構造異常がある人は鼻腔(びくう)が狭く、スコープが通らない可能性があります。あらかじめ医師に相談してください。

  一方、鎮静薬は投与すると眠ったりぼんやりしたりしながら検査を受けられるため、検査中の苦痛や不安の軽減、姿勢の維持も可能です。苦痛がほぼなくなることを考えると、診断能力の高い経口内視鏡による検査をお勧めします。

  経鼻内視鏡と鎮静薬のどちらを用いるかは担当医師とご相談いただき、適切な検査方法を選びましょう。

オリンパス医療ウェブサイト「メディカルタウン」より

オリンパス医療ウェブサイト「メディカルタウン」より

 ◇早期発見へ、まず検診を

 胃がんの早期発見のためには検診が第一であることは間違いありません。他の部位に転移していない限局がんとして発見された場合、5年生存率は95%以上に達しています。内視鏡検査は苦痛を伴うと考えられがちですが、すでに記載したように経鼻内視鏡や鎮静薬の使用といった手段もあります。

  最近は土・日曜日の検査、女性医師の指定、来院回数を減らすためのオンライン診療による結果説明など、個人の生活スタイルに合わせた検診内容を提案してくれる施設も増えています。まずは検査を受けられる市町村や施設に問い合わせた上、あなたに合った胃がん検診をぜひ受けてください。(了)

高木院長

高木院長


高木謙太郎(たかぎ・けんたろう)
 2007年東京慈恵会医科大学卒。同大学付属柏病院、東京都立墨東病院、東京都保健医療公社豊島病院などを経て22年5月に四谷内科・内視鏡クリニック(新宿区)を開業。「胃がん大腸がんで亡くなる人をゼロに」をミッションに、人と人のつながりを大切にした、専門的で高度な医療を提供している。

〔参照〕
 1. 公益財団法人がん研究振興財団:がんの統計2023 図表編P45
https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/pdf/cancer_statistics_2023_fig_J.pdf

 2. 国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス:胃がん 予防・検診
https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/prevention_screening.html

 3. Lin Y, et.al. Research Group for the Development and Evaluation of Cancer Prevention Strategies in Japan. Effects of Helicobacter pylori eradication on gastric cancer incidence in the Japanese population: a systematic evidence review. Jpn J Clin Oncol. 2021 Jul 1;51(7):1158-1170.  

4. 厚生労働省:がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001210356.pdf

5. 国立研究開発法人国立がん研究センター 地域がん登録によるがん生存率データ(1993年~2011年診断例)(5年生存率:)胃
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#a32

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