こちら診察室 内視鏡検査・治療と予防医療
その血便は大丈夫?
~増える大腸がん~ 【第6回】
◇治療法
大腸がんが見つかると、治療方法を決めるために画像検査などの追加検査を行い、がんの進行度合いである病期(ステージ)を評価。進行度が最も低いステージ0から最も高いステージIVまでの5段階に分類します。ステージは、がんが大腸の壁の中にどのくらい深く侵入しているかを診る深達度のほか、リンパ節への転移、肝臓や肺など大腸以外の臓器への転移(遠隔転移)、おなかの中へのがん細胞の広がり(腹膜播種〈ふくまくはしゅ〉)があるかどうかによって次のように決まります。
厚生労働省のホームページより
●ステージ0:がんが大腸粘膜に限局している
●ステージⅠ:固有筋層にとどまる
●ステージⅡ:固有筋層の外に広がっている
●ステージⅢ:リンパ節転移がある
●ステージⅣ:遠隔転移や腹膜播種がある
大腸がんは他のがんと同様、ステージが低いほど治療の経過も良好です。早期に見つけるためには定期的な検診が必要と言えるでしょう。
1. 内視鏡手術
内視鏡を使って、大腸の内側からがんを切除する方法です。リンパ節転移の可能性がほとんどなく、深さも浅いがんが対象となります。おなかに傷を付けずに行えますが、医師には技術が求められます。切除した病変は病理検査を行い、組織型やがんの広がりの程度などを確認した上で追加治療の必要性を確認します。
ステージ0~Ⅲの大腸がん治療の選択(国立がん研究センターのホームページより)
2. 外科手術
内視鏡治療での切除が難しい場合には手術します。最近では、二酸化炭素でおなかを膨らませ、小さな穴を開けてカメラと鉗子(かんし)と呼ばれる長いはさみのような器具を入れて処置する腹腔(ふくくう)鏡手術や、ロボットアームを挿入するロボット支援下手術なども選択されます。どのような手術が適しているかは患者さんごとに異なりますので、主治医とよく相談しましょう。
3. 化学療法
抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などの飲み薬や点滴の薬を使って治療する方法です。手術の前や後に化学療法を組み合わせることもあります(了)
高木院長
高木謙太郎(たかぎ・けんたろう)
2007年東京慈恵会医科大学卒。同大学付属柏病院、東京都立墨東病院、東京都保健医療公社豊島病院などを経て22年5月に四谷内科・内視鏡クリニック(新宿区)を開業。「胃がん、大腸がんで亡くなる人をゼロに」をミッションに、人と人のつながりを大切にした、専門的で高度な医療を提供している。
【参照】
1. 吉原 正治, 大腸癌(直腸癌を含む)の疫学, 日本内科学会雑誌, 96(2), 200-206, 2007
2. 溝上 哲也, 生活習慣と大腸がん, 日本消化器病学会雑誌 117 (5), 394-401, 2020
3. 日本消化器がん検診学会:全国集計資料集.2020
4. 日本消化器がん検診学会:大腸がん検診マニュアル―2021年度改訂版
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(2024/10/08 05:00)
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