ダイバーシティ(多様性) 当事者が見た色覚特性のキラキラした世界
親から子へそっくり遺伝
~強弱の度合いも変わらず~ 【第5回】
皆さんの血液型は何型ですか。私と兄は共にO型ですが、父と母はそれぞれA型、B型です。これは父がAO型、母がBO型の遺伝子を持っていて、私も兄も両親のOを受け取ったためです。従って、私と兄の2人ともOO型ということになります。こういう話をすると、Rh-(アールエイチマイナス)とは何か、どうやって遺伝するのかなどと深掘りしたいところですが、話が拡散してしまうので避け、今日も色覚特性についてお話しします。
前回の最後で予告した通り、今回は私のいとこ「まー君」の紹介をするとともに、遺伝に関して少し詳しく触れたいと思います。
色覚特性の遺伝をお話しする上で、大前提の条件があります。ほとんどの遺伝について言えることですが、親から子に伝わる遺伝情報は書き換えられることがありません。何が言いたいかというと、遺伝子の情報が強くなったり弱くなったりするケースはないということです。弱度の色弱を受け継いだら同じ弱度の色弱に、私が持っている強度の色盲を受け継ぐと必ず強度の色盲になります。
私には子どもが1人いまして、目に入れても痛くない、かわいくて賢い男の子。色覚の遺伝は基本的に隔世遺伝ですので、この子は色盲ではありません。将来の夢はお医者さんです。このサイトの関係者の皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。冗談はさておき、このままいけば私の色盲遺伝子は私の代で終わりになります。勘の良い人は分かったかもしれません。先述のまー君は色盲のはずなのです。まずは色覚特性をめぐって起こる遺伝の基本部分からお話ししなければなりません。
◇自覚しにくい女性
ヒトの場合、男性(染色体XY)と女性(染色体XX)が子をつくり、遺伝子を引き継ぎます。子どもは両親からXかYのどちらか一つの染色体を受け取り、XXの組み合わせなら女の子、XYなら男の子が生まれます。くだんの色覚特性遺伝子はX染色体にしか存在しません。また、潜性遺伝と言われる弱い遺伝子なので、他にもっと強い顕性遺伝の遺伝子があれば色覚特性が表に出てくることはありません。顕性を「X」、色覚特性を持った潜性を「X'」、男性染色体を「Y」として、強さを不等式で表してみると「X>X'>Y」となります。
Xが一つでも存在すれば基本的には色覚特性の自覚はありません。色覚特性の男性との間に女の子が生まれた場合、遺伝子は「XX'」か「X'X'」。「XX'」なら色覚特性の自覚はありませんが、遺伝子は持っているので「保因者(キャリアー)」と呼ぶこともあります。ということは、色覚特性が出るのは「X'X'」もしくは「X'Y」の2パターンのみとなります。ちなみに、「X'X'」の子が生まれるのは父母ともに色覚特性遺伝子を持つ場合に限られます。しかも、後述しますが「X'X'」の場合は色覚特性を自覚しづらいケースもあります。女性は色覚特性に気付きにくいのです。
以上を踏まえ、私とまー君の遺伝についてお話ししましょう。右のイラストをご覧ください。私の祖父からつながる遺伝の様子です。上記の通り、同じ祖父から受け継いだ遺伝子なので、祖父から色覚特性が遺伝すれば全て祖父と同じ色盲となります。祖父の孫に当たる男性が4人、このうち色覚特性を持つのが私とまー君の2人でした。つまり50%の確率で発生しました。一般的には色覚特性を持つ男性の孫に同じ特性が出る可能性は12%前後なので、祖父の血筋は少し高い確率と言えます。私の母から「祖父は色覚特性が強かったらしい」と聞いています。そのため、私が色盲なのは当然でしょう。
ところが、当のまー君は「俺、色弱だよ」と自信満々に言います。28歳までの私と同じように、きちんと精密な検査をしていない上、全色盲(視界が白黒)ではなく、特定の色以外は特に問題なく認識できるために色弱だと思っていたのでしょうか。フレンチのシェフという仕事柄「色味の調整に困ることはないの?」と私が聞くと、「職場には色弱のことをちゃんと伝えている。本当に困ったときは人に聞くようにしている」と、対応策として100点満点の回答でした。
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(2023/01/20 05:00)