笠原麻里 医師 (かさはらまり)

駒木野病院

東京都八王子市裏高尾町273

  • 児童精神科
  • 診療部長

精神科 小児科 内科

専門

児童精神医学、小児期のストレス障害(PTSDを含む)、不登校、子どもの不安障害、子どもの統合失調症

笠原麻里

国立国際医療研究センター国府台病院や国立成育医療研究センターにおいて、児童精神医学の臨床を長くリードし、常に第一線で患者と向き合ってきたこの分野のエキスパート。実際の臨床で遭遇する困難なケースへの対応など、研究だけではなく臨床に重きを置いている笠原医師ならではのものがある。子どもと直接接する学校関係者やスクールカウンセラー向けの講演活動なども旺盛におこなっている。また「子どもの心をストレスから守る本」(講談社)ほか著作も多く出版している。

診療内容

同院には、全国でも数少ない児童精神科がある。そこで診療部長をつとめているのが、笠原医師である。児童精神科の開設は笠原医師にとって長い間の夢であったという。
「わが国の児童精神科臨床は、少子化で子どもの医療へのニーズは増す一方、支援の供給源である医師や専門スタッフ、医療機関は著しく不足しているのが現状です。現在、児童精神科専門医療機関として入院機能を有する病院は全国で20施設弱しかありません。それもほとんどが国公立病院です。多くの施設がある成人の精神科医療とは雲泥の差です」(笠原医師)
大人が多くの心的ストレスを抱え問題化している現代社会ではあるが、子どもたちもその社会に生きている以上、たくさんの不安を抱えながら暮らしている。同院では、中学生以下の子どもの精神的な問題について、医療的な支援を必要とするケースの治療や相談を受けている。
代表的な症例としては、集団不適応、不登校、注意力障害、多動、友達とうまく付き合えない、対人恐怖が強い、家庭内での問題行動、リストカット、思春期の深刻な心理的問題、家庭や施設での養育困難な状態などがある。これらに対して、笠原医師を含めた児童精神科医、看護師、心理士、作業療法士、精神保健福祉士、事務員というスタッフが一丸となって診療にあたっている。
診察室や面談室のほかに、発達の偏りや運動機能の発達に遅れがある児童に対して、身体機能の発達や促進を目的に感覚統合をおこなう感覚統合療法室や、遊びを通して子供の精神面への治療をおこなうプレイセラピー室などの施設を用意し活用しているのも、同院の特徴である。
「子どもは環境において受動的立場におり、さらに経験も乏しいため、自分でストレスのかかる状況から逃れたり、対処したりするのが難しいものです。たとえば親の都合で引越しや転校を余儀なくされることもあります。離婚などで家族の状況が変わることもあります。親に守られて過ごすことは重要ですから、子どもが環境に合わせて生活することは重要ですが、一方で子どもにとっては過剰適応を生じ、心のストレスを高めていることも少なくありません。もちろん、親の方もそのような状況のときには多忙で、なかなか子どものことまで配慮できないのは当然ですが、少し余裕ができたら子どもの心のケアに目を向けていただけるとよいと思います」(笠原医師)
引越しや転校などよりも、はるかに大きなストレスや恐怖に見舞われてしまうこともある。2011年3月11日発生した東日本大震災の際には、日本中が大きな衝撃と悲しみに包まれた。
「被災地の方々はもちろんですが、国民全体がなんらかの精神的な負荷を受けた災害でした。もちろん、子どもたちも本当に大きなストレスを受けながら日々暮らしています。精神の発展途上にあり、大人以上に環境からの影響を受けやすい子どもにとって、その衝撃は計り知れないものがありました。中にはPTSDなど、医療的な支援が必要な状態になっている子どもたちもたくさんいます。さらに災害と原発事故のために1万人を超える児童が全国あちこちに避難をしました。避難してきた子どもたちは一見元気に活動している子も多いのですが、実際は災害のストレスに加え、転校や新しい環境の変化からくるストレス、不安など、幾重もの重圧を抱えています」(笠原医師)
このような状況を目の当たりにして、笠原医師は同院での診療のほか、子どもたちに直接かかわる児童福祉専門スタッフ、保健機関、学校関係者やスクールカウンセラー、精神科診療所の医師たちがどのような視点で子どもにかかわり、支えたらよいのかを考えるための「震災でトラウマを受けたことども心のケア」に関する講演活動をおこなったり、子どものストレスサインを見逃さないための勉強会を各地で開くなど、病院外での活動も旺盛におこなっている。
すべては心に重石を抱えて困っている子どもたちのため。児童精神科臨床の現状をよりよいものに変えていくため。笠原医師は日々駆け回っている。そして、こんな言葉を付け加えた。
「ちかごろ発達障害という言葉が独り歩きしているように思います。それ以前に精神発達とは何か、ということを考えることが必要だと私は思います。このような意味からも、精神科医療の中の児童精神科という位置づけにはこだわりを持っております。これから多くの方々のお力をいただくことになる部門ですが、わが国の児童精神科医療の一つの理想を形作りたいと思っております」(笠原医師)

医師プロフィール

1987年3月 東京女子医科大学医学部 卒業
1988年5月 慶応義塾大学病院精神・神経科、国立精神・神経センター国府台病院児童精神科
2002年10月 国立成育医療センターこころの診療部育児心理科医長
2011年7月 駒木野病院児童精神科診療部長