蝶名林直彦 医師 (ちょうなばやしなおひこ)

聖路加国際病院

東京都中央区明石町9-1

  • 呼吸器センター(呼吸器内科・呼吸器外科)
  • 特別顧問

呼吸器科 内科

専門

臨床呼吸器病学、呼吸不全の病態・治療の他、専門はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)・気管支喘息、酸素療法・人工呼吸管理

蝶名林直彦

蝶名林直彦医師は、呼吸器疾患全般を診るが診療の機会が多いのは肺炎やCOPDである。重症度の高い慢性呼吸器疾患に適応となる在宅酸素療法(HOT)や非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)にも専門的に取り組むほか、呼吸リハビリテーションや患者教育にも力を注いでいる。

診療内容

運動や歩行などの労作時、例えば少し階段を上がったりする時に息切れを感じてしまう。これがCOPDに最も多い初発症状である。蝶名林直彦医師は、COPDに気づくタイミングについて次のように語る。「特に高齢者という訳ではないのに、中年、およそ50代以降の人が息切れを感じるのがCOPDの第一の徴候です。もっとも、COPDは喫煙者であるというのが一番の要因ですが。第二に、風邪をひいた時にCOPDに気づく場合もあります。風邪であれば通常は咳や痰が数日程度で治まるものですがCOPDの場合は、軽い風邪であっても、咳と痰がかなり長引きます。さらに、日頃は坂道を上っても息切れしないような人でも息切れを感じるようになるのです」。この場合、風邪自体が治った後、2週間も咳と痰が続き、さらに1か月ほど痰の増える期間のあることがあります。健康な人であれば痰が出てもせいぜい1日1~2回だが、COPDでは気になるくらいの痰が出るのです。
さらに第三として、健康診断でたまたま胸部エックス線を撮影した際に見つかることもあるという。「胸部エックス線撮影をすれば、単純写真でも肺の膨らんだ状態(過膨張)が見つかります。さらに胸部CTによって気腫化がわかります」(蝶名林医師)
COPDの治療は、気管支拡張薬が基本だが、重症度の段階によって選択する薬は異なる。蝶名林医師によれば、重症度は肺機能検査で判定するが、通常は吸入薬を1種類から始めることが大半である。「COPDでは気管支が狭くなって息を吐きづらくなるので、気管支を少し拡張させる作用の吸入薬が治療の主体です。これを1日1~2回吸入するだけで24時間にわたり息切れが軽減します」。ちなみに薬剤の種類として、従来は抗コリン薬からスタートする場合が多かったが、最近では長時間作用型β2刺激薬(LABA)を選ぶ場合もあるという。外来通院しながら、こうした薬物療法を気長に継続していく訳だ。

COPDの治療において、蝶名林医師が力を入れているのが呼吸リハビリテーションだ。息切れのために歩行や運動がおっくうになるのを避け、なるべく身体を動かすことが大切だという。こうした広い意味での呼吸リハビリテーションを、薬物療法と並行して進めていく。これは特に入院する必要があるものではなく、通院で継続することになる。「例えば心筋梗塞で手術した翌日から身体を動かすプログラムを作るように、呼吸器の病気においても寝たきりは避けるべき状態です。病状がある程度安定すれば、あまり安静にばかりしないで動くことが大切です。これは他の医学分野でも共通する流れですね。運動療法とはいかないまでも、軽い筋力トレーニングをするとよいでしょう。運動した時に息切れがあるなら、呼吸訓練のように軽いものから始めることです。ある程度動けるなら運動療法を続けることを推奨します」(蝶名林医師)。
さらに、呼吸リハビリテーションと並行して行われるのが患者教育だ。ここで大切なのは、何よりもまず禁煙、そして肺炎などによる増悪の予防である。「急に状態が悪化することを増悪と言いますが、これをいかに予防するかが、最終的にCOPDで亡くなることを防ぎます。例えば肺炎球菌やインフルエンザのワクチンを適宜接種するなど、感染症には注意するのが基本です」
こうした治療やリハビリテーションで軽快するのが望ましいが、重症度の高いCOPDに対してはどのような治療が行われるのだろうか。「軽症のうちは薬剤の吸入でよいのですが、重症度が上がってくると1剤では足りなくなり、拡張薬にステロイドの吸入を追加します。さらに進行して血液中の酸素濃度も低下すると、在宅酸素療法(HOT)を始めることになります。HOTには労作時や睡眠中のみ酸素を吸うような間歇的酸素処方と終日酸素吸入を続ける持続的酸素療法があります。ただ、酸素療法を要するまで進行する人はさほど多い訳ではありません」(蝶名林医師)
酸素療法には機材が必要になる上、危険性も伴うため、在宅酸素療法を行う際はまず3~4泊入院し、器材の使い方や、どのような状態の時に何リットルくらいの酸素を吸う必要があるかなどを指導する教育入院が必要だ。これを経て自宅に帰るわけだが、大切なのは「継続すること」であると蝶名林医師は強調する。禁煙も運動療法も酸素療法も、続けられるかどうかは本人の意思にかかっている。頼れる医師の指導の下、増悪を予防しながら治療やリハビリテーションを継続したい。

医師プロフィール

1951年6月 兵庫県西宮市生まれ
1976年 神戸大学医学部 卒業
1976~1990年 虎の門病院内科病棟医を経て、呼吸器内科医長
1988年 東京女子医科大学第一内科にて学位取得
1990年 聖路加国際病院内科医長
2007年10月 聖路加国際病院 呼吸器内科部長
2013年4月 同内科統括部長(呼吸器内科部長兼務)
2014年10月 呼吸器センター長併任 現在に至る