胸・背―腰・腹のけが 家庭の医学

□胸のけが
 重いけがの場合は、①呼吸するのが苦しい、十分に呼吸ができない、②顔色がわるい、くちびるや指先が紫色になっている、③傷が深く肺まで達し、空気が傷口より漏れて出入りしている、④皮膚の下に空気が漏れ、皮膚を押すとピチピチしたような感じがする、などの症状のときです。
 胸を重い物やハンドルで打ったり、機械にはさまれたとき、傷がなくても心臓や縦隔(じゅうかく:心臓や気管、食道などがある胸部の中央部分)にけががあると重症になります。たんから血が多く出たり、空気が漏れるときも重症です。息を吸うとき、空気が傷から漏れる場合はハンカチ、ラップで圧迫し、肺がつぶれる(気胸)のを防ぐようにします。そのとき、手のひらサイズの四角にして、4辺のうち3辺を絆創膏(ばんそうこう)で固定し、1辺だけに隙間をつくり空気の逃げ道を残します。

 重い症状がない場合、肋骨(ろっこつ)骨折や胸部打撲が多く、深呼吸やからだを動かしただけでも痛みます。また、直後は痛くなくても、翌日または2~3日後に痛くなることや、たんに少量の血が混じることがあります。
 応急処置は、胸全体をきちっと包帯で巻くか、広い範囲を絆創膏で圧迫しながら貼ります。ひびも骨折です。胸部打撲も肋骨骨折も同じ痛みがあり、応急処置はほぼ同じです。「打撲は痛くない、骨折は痛い」というのは誤った考えで、どちらも痛いのです。

□背―腰・腹のけが
 高所からの落下で背中や腰を強打したとき、背骨や腰骨や骨盤のけがのほかに、反動で頭を打つこともあります。おしりから落下した場合も、背骨の圧迫骨折を起こすことがあります。骨折のほかに、内臓破裂も考えなければなりません。背骨がずれると足が動かなくなること(下肢まひ)があります。
 土砂などの重いものが腹に落ちた、車に腹をひかれた、車の間にはさまれた、などは傷がなくても内臓破裂を起こしていることが多く、一刻も早く手術のできる病院に運ばなければなりません。内臓破裂すると、大出血の危険もあります。自転車やオートバイのハンドルがおなかにぶつかると内臓破裂の可能性が高いです。
 はじめは体調がよくても徐々にわるくなり、心臓マッサージ(胸骨圧迫)をしながら受診することもあります。救急車を呼びましょう。
 軽いけがでは打撲傷のことが多いでしょう。物の角などが当たったとき、内臓破裂を起こすことがあります。立って歩けたとしても安心せずに、顔いろや尿の色(赤い尿、血尿)などに注意します。徐々に具合がわるくなる場合は、病院を受診します。

(執筆・監修:八戸市立市民病院 事業管理者 今 明秀)