けがの処置 家庭の医学

 大きなけがや大量出血では、急場をしのぐ応急処置をし、急いで救急車を呼ぶか、医師に診てもらいます。ここでは簡単なけがの手当てを示します。

□出血や傷のないとき
 頭や胸、腹を打ったときは、傷がなくても、全身状態を見ることが大切です。上肢や下肢、指が変形し痛みがあるときは、脱臼(だっきゅう)や骨折のことが多く、病院を受診します。

□出血や傷があるとき
 まず、止血をします(参照:止血のしかた)。止血後、傷をさわらないようにします。再出血や化膿(かのう)することがあります。
 傷のごみ(異物)をとります。糸くず、砂、ガラス片は清潔な手やピンセットなどで取り除きます。砂や泥などは水道水で、油はせっけん水で洗い流します。十分にとれないときは、清潔なガーゼで軽くこすりとります。強くこすると組織を傷つけ、異物を押し入れることになります。
 とれないときや痛くてとれないときは医師に頼みます。傷内の異物は感染・化膿の原因となります。化膿しなくても皮下に残り、変色することもあります。異物をとることが傷の手当ての第一歩です。
 頭の傷は、頭髪をかき分けて見つけます。見つけにくいときは髪を短く切りますが、切った髪が傷口に入らないようにしましょう。切った毛髪や砂、ガラスは掃除機で吸いとったり、ガムテープでとります。
 とげや針などの小さな物による刺し傷は「刺し傷の手当て」を参照してください。刺したままで医師を受診する場合、皮膚から出ている部分を短く切らないことです。
 包丁や太い木、鉄棒が深く刺さっている場合、抜くと多量出血することがあり、抜かないで急いで病院に行きます。
 傷に消毒液を塗るのはよくありません。消毒液が傷に入ると、治りがおそくなることがあるからです。傷口のまわりから消毒し始め、傷の周囲を広く消毒します。
 ガーゼやハンカチをのせ、厚手の包帯ですこしきつく巻くと、痛みが軽くなります。布や綿、ティッシュは傷に密着してしまいとれにくくなり、異物となるので注意しましょう。

□気をつけること
 庭やグラウンド、畑などでけがをした場合は、小さな傷でも、化膿のほか破傷風(はしょうふう)に感染するおそれがあります。破傷風の感染は重症で生命にかかわることがあります。一般に破傷風の傷はあまり化膿しません。傷が治ったかなと思ったころに、ことばが出にくくなり、口が開きにくくなるなどの特徴的な症状が多いようです。潜伏期は3日から2週間程度です。化膿防止の応急処置後、必ず病院に行き受診しましょう。破傷風法定ワクチン接種は1968年以降に生まれた人からです。それ以前に生まれた人はワクチン未接種のため破傷風が発症する危険があります。また、法定接種した人でも、2回目の12歳より10年以上経過した場合は免疫力が下がっています。破傷風ワクチンの有効性は約10年とされています。

(執筆・監修:八戸市立市民病院 事業管理者 今 明秀)