けが人が出たら 家庭の医学

 けが人に遭遇したときは、次の点に注意しましょう。
 1.落ち着くこと……けが人も周囲の人も、まずあわてず落ち着くことです。冷静な判断や手当てをおこなうには気持ちを落ち着かせます。
 2.安全が第一……災害(地震や強風)では、物が落ちてこない広い場所や物が飛んでこない場所に、けが人も自分も避難して、まず身の安全を確かめます。
 3.2次災害の防止……地震の場合、火元を消したりガスの元栓を閉め、落下や倒れるものがない広い場所に逃げます。また、津波の危険がある場合は高台に逃げましょう。仕事中の事故では機械を止め、事故につながる薬品などを遠ざけるようにします。交通事故では、続いて起こる事故を防止するために発煙筒をたき、表示板などを置きます。犠牲者がさらにふえる2次災害を防ぐ努力をします。また、人や動物を助けたり、物をとるために災害現場に行くなど、危険をおかすことはやめましょう。これらは救急隊員などの専門家に任せましょう。
 4.けが人の状態……けが人の意識がない、もうろうとしている、大きなけがのときは、その場から離れずに、大きな声で他人を呼び、助けを借りて、急いで救急車や医師を呼びます。けがの程度によりますが、自分一人でけが人の処置・対応ができるか、また周囲の人の助けを借りたほうがよいか迷ったら、救急車や人を呼んだほうが無難です。いずれの場合でも、すばやい判断が必要になります。

□手当ての実際
 まず、けが人の意識(会話ができるか)や呼吸の状態、脈の有無(手やくび、股の脈)、顔色を見ます。脈がない場合は胸骨圧迫(心臓マッサージ)をします。
 意識がないときは血がしみている衣服を、意識があるときはそのほかに痛い場所の衣服を、急いで開けたり破いたりします。大量に出血しているときは、きれいなタオルかハンカチを何枚か重ねて傷に当て、出血している傷を手または指で強く押しつけ止血をします。ほとんどの場合、強く押さえると血は止まります。押さえても出血するようなら、もう一度出血している場所を確認してから押さえるか、もっと強く押しつけます。他人の血液が救助者自身の指先などに付着しないような工夫が必要です。
 さらに、出血がなくても、顔色がわるい場合、内臓や脳に出血していることもあります。骨盤や大腿(だいたい)骨の骨折、内臓の損傷などでは、体内に大量の出血を起こします。脳の損傷でも徐々に意識がなくなったり、もうろうとしたりします。傷や出血がなくても安心せず、顔色や脈、呼吸、意識の状態をくり返し見るようにします。
 顔色や脈、呼吸、意識の状態が問題なければ、出血している場所の傷の手当てに専念します。

(執筆・監修:八戸市立市民病院 事業管理者 今 明秀)