治療・予防

炎症の再発予防に新薬
視神経脊髄炎スペクトラム障害(脳神経疾患研究所多発性硬化症・視神経脊髄炎センター 藤原一男センター長)

 視覚障害や手足の感覚障害などの再発を繰り返し、失明や歩行困難に至ることがある視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)。再発を予防する薬剤の開発が進み、2019年と20年に相次いで承認された。脳神経疾患研究所(福島県郡山市)多発性硬化症・視神経脊髄炎センターの藤原一男センター長は「早期に診断して治療を始めることが重要です」と話す。

視神経脊髄炎スペクトラム障害の主な症状

 ▽急な視力低下や手足のまひ

 藤原センター長によると、視神経と脊髄だけでなく、脳の炎症を繰り返す場合を含めて広く「視神経脊髄炎スペクトラム障害」という。炎症が生じる部位によって、〔1〕急な視力の低下〔2〕手足のまひ、しびれ、痛み〔3〕吐き気・嘔吐(おうと)〔4〕しゃっくりが数日~数週間止まらない〔5〕疲労・倦怠(けんたい)感―などの症状が表れる。10代から高齢者まで幅広い年代で発症するが、30代後半から40代前半に多い。

 脳や脊髄に存在するアストロサイトと呼ばれる細胞には、アクアポリン4(AQP4)というタンパク質が存在する。NMOSD患者では、免疫の誤作動により、AQP4に結合する抗体(抗AQP4抗体)が産生され、アストロサイトが攻撃、破壊されることでさまざまな症状が表れると考えられる。

 国内の患者数は4370人と推計されている。患者の7~8割で抗AQP4抗体が検出され、そのうち9割が女性とされる。

 ▽新薬承認で選択肢拡大

 無治療の場合、年に1~1.5回の頻度で再発し、そのたびに症状が悪化する。これまで厳密な臨床試験で再発予防効果が確認された薬はなかったが、19年にエクリズマブ、20年にサトラリズマブという注射薬が厚生労働省から承認された。

 サトラリズマブは、抗AQP4抗体の産生などに関わる物質「IL―6」のシグナルの伝わりをブロックする。臨床試験では、同薬を投与したグループは偽薬を投与したグループと比べて再発が抑えられた。

 藤原センター長は、サトラリズマブの投与が適する患者として、抗AQP4抗体陽性者のうち、既存薬で再発を抑えられない、または副作用で治療を続けられない例を挙げる。ただ、サトラリズマブの投与中に細菌やウイルスに感染しても発熱が見られないことがあるため、感染症には注意が必要だ。

 藤原センター長は「どの患者さんにどの新薬を使用するか、効果や副作用、通院の頻度、患者さんの希望などを含めて検討することになるでしょう」と指摘する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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