多発性硬化症(MS)の疾患修飾療法(DMT)は、再発や疾患進行の抑制に効果的だが、患者負担や治療費、副作用の可能性を考慮し、DMT中に長期間病状が安定している場合において、治療中止の可能性が観察研究を中心に検討されている。オランダ・Amsterdam University Medical CenterのEline M. E. Coerver氏らは、長期間病状が安定している成人MS患者89例を多施設ランダム化試験(RCT)DOT-MSに登録し、ガイドラインが推奨する第一選択のDMTを安全に中止できるかを検討。DMT中止群で、事前設定された限界を超える炎症性疾患活動性の再発が起こり、試験は早期中止となった。詳細はJAMA Neurol2024年12月9日オンライン版)に掲載された。

臨床的再発とMRI炎症活動性で評価 

 対象は、18歳以上の再発性MS(再発寛解型または二次性進行型)で第一選択DMTを受け、過去5年間に再発および顕著なMRI活動性がない患者。2020年7月~23年3月にかけてオランダ国内14施設で89例を登録し、1:1で第一選択DMTの継続群(44例)と中止群(45例)にランダムに割り付けた。

 主要評価項目は、臨床的再発の確診またはMRIにおける有意な炎症性疾患活動性、またはその両方とした。後者については、脳MRIにおける3つ以上のT2病変または2つ以上のコントラスト増強病変と定義。評価者は盲検化し、intention-to-treat集団で評価した。

 全89例における年齢中央値は54.0歳(四分位範囲49.0~59.0歳)、女性は67.4%、追跡期間中央値は15.3カ月(同11.4~23.9カ月)だった。80例(89.9%)が再発寛解型だった。継続群のうち2例が追跡から脱落した。

中止群の17.8%で有意な炎症性疾患活動性が出現 

 中止群45例のうち8例(17.8%)が主要評価項目に到達し、試験は早期中止となった。このうち6例は臨床的再発を伴わない炎症性疾患活動性のみ、残り2例は臨床的再発と炎症性疾患活動性の両方に合致するもので、臨床的再発のみの患者はいなかった。疾患活動性出現までの期間の中央値は12.0カ月(四分位範囲6.0~12.0カ月)だった。

 継続群44例で主要評価項目に到達した者はいなかった。中止群3例と継続群1例で、主要評価項目の基準に満たない炎症性疾患活動性(コントラスト増強病変1つ)が認められた。MRI活動性の出現例と非出現例で、ベースライン背景に有意差はなかった。

 当初は非劣性解析を予定していたが、試験が早期中止となったため実施できなかった。

 今回のRCTは比較的小規模だが、中止群における炎症再発率は継続群と比べて有意に高く、55歳以上の患者を対象とした先行研究(DISCOMS試験)よりも高い結果となった。

 これらの結果を踏まえ、Coerver氏らは「5年以上病状が安定しているMS患者であっても、第一選択DMTの中止は炎症性疾患活動性の再発につながる可能性がRCTにより示された」と結論している。試験は現在、観察研究に切り替えられ、DMT中止・再開の影響を検討している。

(医学ライター・小路浩史)