飲酒量がエタノール換算で1日あたり男性は60g以上、女性は50g以上で、これが肝障害の原因の場合は「アルコール関連肝疾患(ALD)」と診断します。アルコールは肝臓の細胞で代謝されますが、その際につくられるさまざまな物質が、酸化ストレスや免疫反応を起こすことが肝障害の原因です。腸内細菌も肝障害の進展に関係していると考えられています。また、男性にくらべて、女性は飲酒量が少なくても肝障害が起こります。このため以前、アルコール関連肝障害は中高年の男性に起こる病気と考えられてきましたが、最近では女性で比較的若年の患者さんが増加しています。
飲酒量が多いと、まず、脂肪肝が起こります。ついで、肝臓の細胞が風船状にふくらんで変性し、線維化で肝臓が硬くなります。また、肝臓には好中球という炎症細胞が集まってきます。この過程が進むと
肝硬変へと進展し、
肝がんを併発する場合もあります。また、大量の飲酒をきっかけに、好中球が肝臓に集まる炎症が激しくなり、短期間に肝臓の機能が悪化するアルコール性肝炎が起こる場合があります。特に大量飲酒後に発熱し、血清AST値、ALT値とともに白血球数が多くなって、肝臓と脾(ひ)臓が腫大し、飲酒を中止してもこれら症状が改善しない場合は重症型アルコール関連肝炎と診断され、特に予後が不良です。
アルコール関連肝疾患の治療は酒をやめること、断酒が原則です。肝硬変に進展している場合は、
腹水、
肝性脳症などに対する治療も必要になります。重症型アルコール関連肝炎では副腎皮質ステロイドの投与で免疫反応を抑えたり、体外循環を利用した顆粒球吸着除去療法(GMA)をおこなったりしますが、保険適用はありません。また、肝硬変で18カ月以上断酒ができている場合は脳死肝移植の適応を検討しますが、生体肝移植の場合には断酒期間が6カ月程度でも実施する場合もあります。
なお、最近は飲酒量を減らすことを目的に、ナルメフェンを飲酒前に内服する治療もおこなわれるようになりました。ナルメフェンは脳に作用して、少量の飲酒でも満足して、減酒することができます。アルコール依存の場合は断酒が必須ですが、減酒でも対応可能のアルコール関連肝疾患の患者さんでは、ナルメフェンによる治療も考慮されます。
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