性の分化の異常〔せいのぶんかのいじょう〕 家庭の医学

 わたしたちの性は性染色体で決定され、女子は2個のX染色体、男子ではX染色体とY染色体が1個ずつあります。Y染色体にある遺伝子によって原始性腺は睾丸(こうがん)に分化し、Y染色体のない女子では卵巣に分化します。
 男子では胎児睾丸から分泌される男性ホルモン(アンドロゲン)によって外性器は男性型となります。いっぽう女子では、アンドロゲンがないため外性器は女性型となり、子宮や腟(ちつ)が形成されます。性染色体やホルモンの異常によって性の分化が障害されることがあります。いくつかの疾患がありますが、代表的なものは次のとおりです。

■ターナー症候群
 5000人に1人くらいの頻度でみられる病気で、X染色体が1つ足りない形が代表的です。低身長、翼状頸(よくじょうけい:くびが横に広い)、ほくろが多い、外反肘(がいはんちゅう)、胸の前後径が厚い(楯状胸)、第4、5中手骨が短いなどの特徴があります。時に大動脈狭窄(きょうさく)、リンパ管異常などの奇形を伴うことがあります。
 この病気では卵巣が発達しないので、女性ホルモンが分泌されず、二次性徴(乳房発達、陰毛)や月経も発現しません。腟や子宮の発達も不良です。血中の女性ホルモン(エストロゲン)は低下し、ゴナドトロピン(FSH、LH)は増加します。染色体検査によって確定診断をします。
 治療は女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)を使用し、低身長に対しては成長ホルモン治療が可能です。

■睾丸女性化症候群
 染色体は47XYと完全に男性ですが、男性ホルモンであるテストステロン受容体に障害があるため、体型は完全に女性です。乳房の発達も良好ですが、陰毛、わき毛はほとんどありません。腟はあっても子宮や卵巣はなく、月経もありません。睾丸は腹腔(ふくくう)内や鼠径(そけい)部に見られます。患者さんは女性として養育され、心理的にも女性です。

■クラインフェルター症候群
 男性の病気で、頻度は1000人に1人程度です。染色体は47XXYでX染色体が1つ余分にあります。睾丸の精子形成と男性ホルモン産生が障害されます。成人になっても二次性徴がみられず、しばしば乳腺がはれて女性化乳房を呈します。
 また、手足の長い体型(類宦官〈るいかんがん〉体型)を示します。血中のテストステロンは減少し、ゴナドトロピンは増加します。染色体検査によって確定診断します。治療はテストステロンを投与しますが、精子形成は期待できません。

■その他
 外陰部の異常が副腎過形成の一部でみられます(先天性副腎過形成)。もっとも頻度の高い21-ヒドロキシラーゼ欠損症では過剰の男性ホルモン(テストステロン)が分泌されるので、女子では程度はさまざまですが外陰部が男性化し、治療しないと月経もみられません。

(執筆・監修:東京女子医科大学 常務理事/名誉教授 肥塚 直美)
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