体外受精卵(胚)の全遺伝情報(ゲノム)解析を基に、将来の身長などの容姿や病気へのかかりにくさを予測する技術は信頼性が低いと、大阪大や東京大、理化学研究所などの研究チームが16日発表した。海外では予測の結果、最も点数が高かった胚を子宮に移植する医療行為が行われている例があり、倫理的にも問題があるという。
 日本では現在、生殖補助医療(不妊治療)で胚を選別する着床前診断は、流産の可能性を下げたり、重い遺伝病を持つ子が生まれるのを避けたりする目的に限り、日本産科婦人科学会が認めている。容姿のほか、がんや心臓病、精神病などに関連する遺伝子を調べても、生まれた子が育つ環境や生活習慣に大きく影響されるため、予測可能とは考えられていない。
 しかし、東大の難波真一助教によると、海外では予測に基づく胚の選択が行われ、実際に子が誕生した例がある。このため、研究チームは6種類の主要な予測手法で身長の高さや2型糖尿病の発症のしにくさを予測するコンピューター・シミュレーションを行った。その結果、「ある手法で点数が1位の胚が別の手法で最下位になるなど、信頼性に問題があることが分かった」という。
 シミュレーションは日本最大の「バイオバンク・ジャパン」の公開ゲノムデータを利用。ランダムに500組のカップルを作り、カップルごとに10個の胚を解析した。論文は英科学誌ネイチャー・ヒューマン・ビヘイビアに掲載された。 (C)時事通信社