出産後のからだの変化 家庭の医学

 出産後は、妊娠、分娩(ぶんべん)によって起こった全身および性器の変化が、徐々にもとの状態に戻るとともに、乳汁の分泌という新しい変化が起こります。この時期が産褥(さんじょく)期で約6週間です。

■子宮の回復
 分娩後には子宮は急速に収縮して、おへその下5cmほどのところでかたく触れます。収縮がよいほど出血も少なく順調です。
 お産の翌日には子宮底がすこし上がっておへその高さになりますが、その後は毎日少しずつ小さくなり、4、5日目には恥骨(ちこつ)とおへその中間くらい、7~10日目になるとおなかの上からはもう触れなくなります。

 このように子宮は急速にもとの大きさに戻ろうとして収縮をくり返すため、お産のあと数日間は下腹部が痛みます。これを後陣痛とか後腹(あとばら)と呼びます。
 赤ちゃんにお乳を飲ませるとおなかの痛みが起こりますが、心配ありません。これは乳首を吸う刺激によって脳の下垂体からオキシトシンという子宮収縮ホルモンが分泌されるためで、このように母乳を飲ませることは子宮の回復にもよいのです。

■悪露の排出
 子宮内から血液、卵膜のかけら、粘液、組織の脱落したものが排出されますが、これを悪露(おろ)といいます。産後3、4日までは血液が主で、赤色で量も多いのですが、その後はしだいに褐色になり量も減少します。2週目ごろからは黄色に変わり、4週目にはほとんどなくなってきます。
 しかし、子宮の回復が順調でないと血性のおりものがいつまでも続きます。1カ月以上出血が続くときは診察が必要です。排尿、排便時に会陰(えいん)や悪露を手当てするときは、手をよく洗い、消毒綿で必ず前からうしろへ、尿道口から肛門のほうへ向かって拭くようにします。

■乳汁の分泌
 妊娠中は乳腺がどんどん発育します。これは胎盤から分泌される女性ホルモン(エストロゲン)のはたらきによるものです。しかし、同時にこのホルモンは乳腺に対して作用する脳の下垂体から分泌される乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)の作用を抑えて、乳汁の産生・分泌が抑制されるため、妊娠中は乳汁がほとんど分泌されません。
 お産が終わって胎盤が娩出(べんしゅつ)されると、エストロゲンが消失してプロラクチンの作用に対する抑制がとれるために、乳汁が分泌されるようになります。産後2、3日ごろから乳首をつまむと黄色い乳汁が出てきますがこれが初乳です。初乳は良質なたんぱく質や脂肪分が多くて栄養価が高く、そのうえ赤ちゃんに必要な免疫を強化する物質がたくさん含まれていますので、必ず飲ませましょう。
 そして、赤ちゃんが乳汁を飲む乳首への吸啜(きゅうてつ)刺激によって脳の下垂体から分泌されるオキシトシンという物質が乳腺組織の中の乳汁の通る管(乳管)を反復性に収縮させて、乳汁が勢いよく分泌されます。乳汁は、このように通常産後2、3日ごろから出始め1週間をすぎるころには、白く粘りけのない乳汁に変わり量もふえてきます。これが成乳です。授乳する前には必ず手を洗い、乳頭とその周辺を消毒綿などでよく拭いてから授乳するようにします。

(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 名誉院長 安達 知子
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