■体液量の指標、脱水で高値
食塩の成分であるナトリウムは細胞外に存在する液(血液、組織液など)の量を規定し、また、液の濃さ(浸透圧〈しんとうあつ〉)を規定する重要因子です。体内のナトリウムは食事や飲水など体外からの摂取量に対応して、適当量が腎臓から尿へ排泄(はいせつ)され、一定に保たれています。
食塩をとりすぎると、細胞外液量がやや増加し、血圧が上がる原因になります。また、
心不全や
ネフローゼ症候群など全身に浮腫がみられる疾患では、ナトリウムが体内に大量に蓄積します。水分の摂取量が極端に不足し、脱水状態になると、血清ナトリウム濃度は上昇します(浸透圧は高い)。
いっぽう、ナトリウムが極端に不足したり、尿量を調節する抗利尿ホルモンが多すぎるとナトリウム濃度は低下します(浸透圧は低い)。
■基準値:138~145mmol/L
■検査結果から疑われる病気
高値の場合には、次のことが考えられます。
水分喪失(発汗、
発熱、尿崩症(
中枢性尿崩症参照)、浸透圧利尿)、水分摂取不足、口渇感の障害、ナトリウム過剰摂取
低値の場合には、次のことが考えられます。
水分過剰(うっ血性心不全、
肝硬変)、多飲、副腎不全、
不適切ADH分泌症候群、
甲状腺機能低下症、低張性脱水(水分より電解質を多く失っている状態。
嘔吐、
下痢、利尿薬の過剰使用)
(執筆・監修:国際医療福祉大学大学院 臨床医学 教授〔臨床検査医学〕 下澤 達雄)