PETとはpositron emission tomography(陽電子放射断層撮影)の頭文字をとったものです。ポジトロン(陽電子:positron)とは、正電荷をもつ粒子で、負電荷をもつ粒子である電子が存在すると、たがいに結合し消滅してしまいます。このとき、放射線の一種であるγ(ガンマ)線が放出されるので、これを検知して画像化するのがPET検査です。
がん細胞は正常な細胞にくらべて活動が活発で、エネルギー源として取り込むぶどう糖の量が正常の3~8倍になるといわれています。そのため、ぶどう糖分子の一部にポジトロン核種(ポジトロンを放出する放射性同位元素)を付けた薬剤(
18F-FDG)を注射すると、糖代謝がさかんながん細胞には、正常細胞よりもはるかに多くのFDGが取り込まれます。PETでFDGから放出されるγ線をとらえて画像化し、集積が多い場所を突き止めれば、そこにがんが存在している可能性が高いことになります。原発巣だけでなく、転移した部位もわかります。
全身を一度に調べられることから、体内にがんの存在が疑われるにもかかわらず部位が特定できない場合や、がん主病巣の存在があきらかな場合の転移の検出には有用です。
【参照】医療機器によるおもな検査:
シンチグラフィ(SPECT/PET)検査
(執筆・監修:自治医科大学 教授〔臨床検査医学〕 紺野 啓)