MRI(磁気共鳴画像)検査 家庭の医学

 体内には無数の水素原子核(プロトン)がありますが、強力な磁場の中では磁気の共鳴現象を起こします。このときに放出される電磁波を検出し、解析して画像化するのがMRI検査です。CTと異なり、放射線を使用しないため、被検者の被曝はなく、くり返しの検査も可能です。また、骨に影響されずに任意の断面での断層像が得られるので、多くの病気の診断に威力を発揮します。
 頭部では、初期の脳梗塞や無症状の脳梗塞、脳腫瘍の診断には必須の検査となっています。また、肝がん乳がん膵(すい)がんなどの悪性腫瘍の診断、脊髄(脊椎)疾患、関節疾患などの診断にもきわめて有用です。
 MRI検査では、従来の造影剤を用いる血管造影検査や造影CT検査とは違い、造影剤なしで血管の描出が可能で(MRA:MR血管撮影)、動脈瘤(りゅう)や動脈硬化の非侵襲的(被検者の負担が軽い)検査法として使われるようになっています。また、これまで内視鏡下でおこなっていた膵管胆管造影では、造影操作によって急性膵炎が起こる危険がありましたが、MRIで膵管を描出するMRCPでは、内視鏡を入れることも、造影剤を注入することもないので、膵管や胆管像を非侵襲的に(受検者の負担を少なく)、安全に得ることができます。
 ただし、検査を受ける人は強力な磁場の中に置かれるので、心臓ペースメーカーを埋め込んだ人では誤作動の危険があります。また体内にステント、クリップなど、磁性の金属が存在する人では発熱の危険があり、これらの人は検査を受けることができません。このほか、装置自体に大掛かりな設備が必要なため、検査ができる施設にも限りがあるので注意が必要です。

【参照】医療機器によるおもな検査:MRI(磁気共鳴画像)検査

(執筆・監修:自治医科大学 教授〔臨床検査医学〕 紺野 啓)