ブドウ球菌、連鎖球菌のほか、緑膿菌などの皮膚感染で起こる皮膚病を総称して“膿皮(のうひ)症”といいます。
これらは体外からの細菌感染によるもので、真皮から皮下組織にかけて急激に進行する炎症を、“蜂巣(ほうそう)炎”といいます。体内の化膿巣、または膿皮症の病巣から化膿菌が血流中に入って、血行性に内から化膿菌の皮膚感染を招くことがあります。
敗血症で起こる皮膚化膿がこれです。
健康な皮膚表面にもこれらの原因菌はいますが、特に毒性を発揮せず、増殖、活動することもなく、無害の状態でいます。それは皮膚表面に殺菌作用があるためです。
この作用を減退させるような変化が皮膚表面に起こると、膿皮症は起こりやすくなります。
糖尿病、貧血、月経不順、栄養障害、腎臓・肝臓の病気などで起こりやすいのはこのためです。また、夏に直射日光を受けたとき汗が出たあとに化膿しやすいのも、このためです。
化膿菌が入った部分によって、膿皮症は次のような臨床型に分けられています。
・とびひ(伝染性膿痂疹〈のうかしん〉)…表皮に限られたもの
・毛包(もうほう)炎…毛包に限局するもの
・?(せつ:フルンケル、面疔〈めんちょう〉)…1個の毛包脂腺(しせん)に限られるもの
・癰(よう:カルブンケル)…2個以上の毛包にわたるもの
・化膿性汗腺(かんせん)炎…汗腺(エクリン腺、アポクリン腺)の化膿
・深膿瘡(しんのうそう)…真皮に及ぶ小さな皮膚の潰瘍
・皮下膿瘍(のうよう)…皮下組織に限局された膿瘍
これらのいろいろな膿皮症は、おのおの独立にできるもののほかに、1つの型から他の型に移行し、また同時に2つ以上の臨床型が発症することも珍しくありません。
これは、長くかかる皮膚病の治療には特に重要な点で、皮膚病が長く続いているときは、多少とも、この2次的細菌感染が皮膚面に加わっているものと考えられます。こういう場合、適切な治療の併用を忘れてはなりません。