中国・Zhejiang University School of MedicineのKejing Zhu氏らは、英国・UK Biobankとフィンランド・FinnGen Studyのゲノムワイド関連解析(GWAS)データを用いたメンデルランダム化(MR)解析により、性行動(初交年齢、性的パートナーの人数)と12種類の心血管疾患(CVD)との関連を検討。その結果、8種類のCVDで初交年齢が低いほど発症リスクが上昇するという因果関係が認められ、女性でより顕著だったとFront Cardiovasc Med2023; 10: 1250404)に発表した。

性的パートナー数は関連せず

 Zhu氏らは、初交年齢および性的パートナー数と12種類のCVD(狭心症心房細動・粗動、アテローム動脈硬化、大動脈解離、下肢深部静脈血栓症心不全高血圧脳内出血、虚血性脳卒中、心筋梗塞、肺塞栓症、くも膜下出血)との関連について、2サンプルMR解析により検討。性行動のGWASデータはUK Biobankから、CVDのGWASデータはFinnGen Studyから取得した。

 まず、単変量MR解析によりCVDに対する性行動の総合効果を検討した。その結果、初交年齢と有意な負の関連が狭心症〔オッズ比(OR)0.667、95%CI 0.561~0.794、P=4.65E-06〕、心房細動・粗動(同0.638、0.523~0.779、P=9.55E-06)、アテローム動脈硬化(同0.694、0.593~0.814、P=6.48E-06)、下肢深部静脈血栓症(同0.739、0.563~0.97、P=2.93E-02)、心不全(同0.712、0.599~0.846、P=1.12E-04)、高血圧(同0.736、0.641~0.846、P=1.49E-05)、虚血性脳卒中(同0.832、0.698~0.992、P=4.08E-02)、心筋梗塞(同0.784、0.646~0.95、P=1.32E-02)で認められ、初交年齢が低いほど発症リスクが有意に高かった。

 これらの因果関係には性差が認められ、初交年齢と狭心症(女性のOR 0.606 vs. 男性のOR 0.722)、心房細動・粗動(同0.592 vs. 0.619)、アテローム動脈硬化(同0.715 vs. 0.732)との関連は男性より女性で強かった。

 一方、男女ともに性的パートナー数とCVDとの因果関係は認められなかった。

不眠、運動不足、テレビ視聴が関連を媒介

 不眠、高強度の身体活動を10分以上行った日数、テレビ視聴時間の3因子を調整後の多変量MR解析では、CVDに対する初交年齢の直接効果が認められた。

 媒介分析では、これらの3因子が初交年齢とCVDとの関連を部分的に媒介していることが判明。不眠が心不全(媒介割合19.89%)および高血圧(同25.00%)、高強度の身体活動を10分以上行った日数が心不全(同19.92%)および高血圧(同25.15%)、テレビ視聴時間が狭心症(同16.90%)および高血圧(同25.46%)と初交年齢との因果関係を媒介していた。

 Zhu氏らは「これらの危険因子を回避することが、CVDの新たな予防・管理方法になる可能性がある」と結論。「初交年齢とCVDを関連付けるメカニズムは完全には解明されておらず、さらなる研究が必要」と付言している。

(太田敦子)