新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下では、感染リスクを避けるため、世界的に医療受診が37%減少した。日本においても医科の受診減少が報告されているが、歯科の受診減少の報告はほとんど見られなかった。そこで、東北大学大学院歯学研究科データサイエンス部門の草間太郎氏らは、COVID-19の流行波ごとに歯科受診行動にどのような変化が見られたかを年齢層・歯科受診種別(外来・訪問歯科)に検討。第1波、第2波で受診控えが起きていたことJ Epidemiol(2024年4月6日オンライン版)に報告した(関連記事「口腔ケアで新型コロナ重症化を予防!」)。

LIFE Studyのデータを用いて歯科受診率を算出

 草間氏らは、Longevity Improvement & Fair Evidence(LIFE)StudyのうちCOVID-19流行前後のデータが利用可能な9自治体のデータを用い、国民健康保険および後期高齢者医療制度に加入している被保険者を対象としてレセプトデータから年齢(0~19歳、20~64歳、65~74歳、75歳以上)・歯科受診種別ごとに週当たりの歯科受診率を算出。COVID-19の流行波とそれ以外の期間の歯科受診率と受診当たりの医療費について比較した。各流行波の期間は、第1波2020年3月23日~5月17日、第2波2020年6月22日~9月27日、第3波2020年10月26日~2021年2月21日、第4波2021年2月21日~6月7日、第5波2021年7月5日~9月13日とした。

第1波では20%もの受診が減少

 解析の結果、全ての年齢層および受診種別において、第1波で17~22%、第2波で3~13%の受診率低下が見られた。歯科受診1回当たりの平均医療費は第1波においてのみ5.2~8.6%の増加が認められた図1、2)。

図1. 年齢層・受診種別、流行波別の歯科受診率

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図2. 年齢層別、流行波別の歯科受診費

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(図1、2とも東北大学プレスリリースより)

 以上の結果から、同氏らは「歯科受診行動への影響は、主に第1波、第2波に限定されていたと考えられる」と結論。初期の流行波の期間では受診率が低下した一方で受診1回当たりの医療費は増えており、「感染リスクを避けるため歯科受診が減少し、受診時の治療内容も変化した可能性がある」と考察した。

 さらに同氏は、「齲蝕や歯周病などの歯科疾患を有している人は多いが、本研究結果からCOVID-19流行初期には必要な治療を受けられなかった人も多くいると考えられる」とし、「感染症のパンデミック時にも継続的に歯科受診ができる仕組みづくりが必要」と展望している。

栗原裕美